| HOME | >活動記録>>発言録2014年4月2日 衆議院文部科学委員会 |
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著作権法改正案に関わる質疑 ○青木愛 よろしくお願いいたします。著作権法第一条には、法の目的として、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、」「文化の発展に寄与すること」とあります。著作権法改正の歴史の中でも、デジタル化、ネットワーク化に対応するための近年の諸改正は大きな動きであり、こうした中で著作権制度の整備に当たってこられた関係者の方々は、大変苦労をなさってきたことと存じております。 さて、今回の著作権法改正におきましても、社会のデジタル化、ネットワーク化への対応という流れの中におきまして、電子書籍の海賊版問題に対処するものと認識をしております。さまざまな問題の現状と本改正案の効果、そしてその影響について本日はお伺いをしたいと思います。 何よりも、やはり著作権者の利益の保護についてまずお伺いをさせていただきます。 今回の改正について著作権分科会における議論を拝見いたしますと、海賊版対策の必要性について、関係者の認識は一致をしていると思います。出版権の拡大に際しては、作者側から、海賊版対策への取り組みとともに、電子出版契約の際のひな形をつくってほしいという努力の要請など、留意点が出されております。 まず一点目といたしまして、この海賊版対策についてお伺いをいたしますが、著作権分科会における資料を見ますと、北米における平成十九年から二十三年の過去五年間の海賊版不正流通によりますコミックの被害推定額が一千五百億から三千億円に上るとされ、また、世界で出回っている漫画の海賊版の元データのほとんどがこの日本国内でスキャンされていると指摘をされています。 海賊版対策について、現在でも、出版者から不正なデータの削除要請を行うなど対応が図られているとは思いますけれども、この削除要請に応じない例というのはどのくらいの割合があり、また、その要請に応じない理由というのはどのようなものがあるのか、まずお伺いをさせていただきます。 ○河村政府参考人 海賊版被害についての対応でございますけれども、ある会社のデータによりますと、専門のところに委託をして不正なデータの削除要請を行ったり、社内スタッフによる削除要請を行っていて、毎月一万件を超える不正削除要請を行っているということを承知をしておりますけれども、それで実際に削除されたとか、どれぐらいそれで結局は削除されていないか、そのことについての分析結果については承知をいたしておりません。 ○青木愛 削除要請は一万件あるということでございますが、今回の法改正も、その現状を鑑みての法改正だというふうに認識をしておりますので、まずは問題の把握という部分におきましては、応じない割合ですとか応じない理由が何であるのかという検証はまずもって必要ではないかなというふうに思います。また今後わかり次第、資料をいただければ助かります。 このような問題について今回法改正が行われるわけですけれども、今回の出版権の拡大ということにおけるどれほどの効果を見込んで今回法改正をされるのか、その点についてもあわせてお伺いができればというふうに思います。 ○河村政府参考人 電子書籍の増加の一方、出版物が違法に複製されてインターネット上にアップロードされるという被害が増加しておりますところ、紙媒体での出版にしか対応していない現在の制度では対応が不十分でございます。 このために、電子書籍に対応するための規定の整備を行いますと、電子出版を引き受ける出版者が著作権者から出版権の設定を受けることができ、その効果といたしまして、出版権者が権利を専有することから、出版権者がみずから、つまり、著作権者の名においてではなく、出版者が主体的にインターネット上に出回っている海賊版を差しとめることができるようになりますので、まずは、国内での被害、これが例えば一つの調査では一年間二百七十億円と言われている、このことについての相応の対策ができるようになるものと考えております。 一方、海外のことにもずっとお話がございましたけれども、海外でのみ公衆送信されている海賊版への対応については、基本的にはその侵害の行為が起きている国の法律に基づくことになりますために、そのそれぞれの国内法制が我が国でのこの出版権についてどう評価するかということについての適用関係によることとなるものでございます。 ○青木愛 ぜひ、現在のその被害の状況とあわせて、これまでの現行の中ではなぜそれが対応できないのか、そして、今度の法改正によってその後の検証もしっかりと行っていただきまして、また御報告をしていただければというふうに思います。 こうした海賊版対策については、著作権者あるいは出版者が独自に努力すべきことではありますけれども、やはりその努力にも限界もあろうかというふうに思います。 国としてクール・ジャパンの取り組み等々、海外への我が国の漫画等のコンテンツを輸出しようというまた積極的な取り組みも一方でなされているわけではございますが、こうした国内外の海賊版問題に対して、国としてもやはりある程度の取り組みが必要なのではないかというふうにも考えるわけでございますが、この海賊版問題に対して国としてどのような取り組みを行っているのか、また行うつもりがあるのか、お伺いをさせていただきたいと思います。 ○河村政府参考人 海外における海賊版の生産、流通あるいは違法アップロードを防ぐためには、基本は、我が国の権利者が侵害発生地における民事、刑事のシステムを活用して対抗措置をとっていただくこととなるのですけれども、このための環境整備に向けて、国としてもしっかりとバックアップをしていかなければいけないと考えております。 国全体、政府全体としましては、知的財産推進計画というものも立てておりまして、その中で各関係省庁が連携して対応することといたしております。 具体的に文部科学省、文化庁として対応することを申し上げますと、二国間協議、例えばアジアの各国と日本との協議の場を通じて、侵害が実際に起きている国、地域に取り締まりの強化を要請いたしております。また、そうした国で、法律はできていても実際に権利者の権利を守るための執行の面が弱いという場合には、このことについてのさまざまな支援策をとる、また、研修事業を行うといったことをいたしております。 そしてまた、その企業などが権利者として権利行使をする場合に、諸外国でさまざまな助けとなるような資料の作成、提供や官民合同ミッション、こういったことを進めているところでございます。 ○青木愛 国としても文化庁としても、各省庁との連携を図りながら、相手国の地元政府に対するさまざまな協力体制あるいは取り締まりの支援等々が行われているということでありますので、今後とも、ぜひ国としてのバックアップもお願いをしておきたいと存じます。 続きまして、もう一つの要請でございますが、電子出版の際の契約書のひな形づくりについて一点お伺いをさせていただきたいと思います。 往々にして、出版者と作者の間で作品についての権利関係が曖昧な例があるように伺っています。また、作者は個人事業主でありますし、特に立場の弱い若手の作家の方々などは、自分の権利、利益を主張することはなかなか難しいのではないかと推察をいたします。 小委員会における議論におきまして、現在、電子出版の契約書には明確な基準もルールもないことから、著作者の権利や公平な利益配分に配慮した新しい形の電子出版契約書のひな形をつくってもらいたいという意見が出ております。 文化庁におかれましても、このひな形づくりについて、そうした取り組みを今後支援する必要があるとお考えかどうか、お伺いをしたいと思います。 ○河村政府参考人 御指摘のように、出版権制度は、著作権者と出版者の間の契約を基礎とする制度でございますので、新たな出版権制度ができる場合にも、著作権者と出版者双方が協力して、有効な契約に向けた慣行が形成されるように努められることが大変重要であると考えております。 まずは、文部科学省、文化庁といたしましては、当事者間の契約慣行の形成にプラスになりますように、法律を成立させていただきました暁には、その法律の趣旨や内容等について、改正法施行までの間に、著作権者の関係者、出版者関係者に対して十分な周知をしてまいりたいと考えております。 また、出版界からは、契約の範囲を著作権者に対して明確に説明し契約上明示していくことに加えまして、著作者団体と話し合いながら、契約ガイドラインの作成や、契約をめぐる紛争処理のための仲裁機関を設けるということを検討しているとも聞いておりますので、このような取り組みについて私どもも継続的に十分に注意して意見していきますとともに、必要に応じて協力をしてまいりたいと考えております。 ○青木愛 ありがとうございます。 最後の質問になりますけれども、出版権と著作隣接権についてお伺いをいたします。 今回の改正内容について、やはり分科会での検討の際に、出版権の拡大という案のほかに、著作隣接権の付与という案がございました。結果としてこの案は採用されなかったわけでありますけれども、著作隣接権者にレコード会社や放送事業者が含まれております。 ですので、こうした案が出てくること自体、理解できなくはないのですけれども、出版者には契約に基づく出版権であって、レコード会社などには著作隣接権ということでありまして、法律上異なる扱いとなった経緯をぜひお聞かせをいただきたいと思います。 ○河村政府参考人 今回改正にかかわらず、もう少し前からの経緯というお尋ねだと理解をいたしますと、我が国、出版者に関する制度に関しては、戦前から出版権の制度というものが発展してまいりました。出版権の制度は、我が国の文化や知識を創造、普及し、これを次世代に継承することに重要な役割を担ってきたものと考えております。 著作者と出版者の間の権利義務関係をどう調整するかということでの、我が国独自の一つの工夫であると承知をいたしております。 レコード製作者などについては、例えば国際的な状況で申し上げますと、一九六一年の多国間条約で、実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約という国際的枠組みがございます。 このように、国際的な標準といたしましては、実演家、レコード製作者、放送事業者というものに対して著作隣接権を付与するということが設計されておりますけれども、出版者の権利についてはこのような国際的な枠組みが現状では形成されておりませんで、保護のあり方は、それぞれの文化、制度によりさまざまとなっております。 ○青木愛 ありがとうございました。 また、午後の参考人質疑の方もぜひ参考にさせていただきまして、次の質疑につなげたいと思います。 どうもありがとうございました。 <午後:参考人宛て質疑> 参考人の方々は以下の通りです。 相賀昌宏 (一般社団法人日本書籍出版協会理事長 株式会社小学館代表取締役社長) 土肥一史 (日本大学大学院知的財産研究科教授) 瀬尾太一 (写真家、一般社団法人日本写真著作権協会常務理事) ○青木愛 生活の党の青木でございます。 本日は、相賀参考人、また、土肥参考人、瀬尾参考人、三名のそれぞれの参考人から大変貴重な御意見をいただきまして、まず御礼を申し上げます。ありがとうございました。 私からも何点か質問させていただきますが、重なりますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。 まず、今回の法改正が必要になった経緯といいますか、海賊版対策に関して、これまでそれぞれのお立場でどのような取り組みをされてこられたのか。不正データの削除要請一万件という数字が挙がっておりましたが、削除要請したその後の結果について、ちょっと先ほどお伺いできなかったものですから、これまで、それぞれのお立場で大変御苦労があったかというふうに思います。特に著作権、個人ではなかなかこの海賊版への対応というのは困難な面もあっただろうというふうに思っておりますので、まずは、この法改正に至るまでのそれぞれのお立場での対応、どのようにこの海賊版に対抗されてこられたのか、御意見を伺えればというふうに思います。 ○相賀参考人 御質問ありがとうございます。 海賊版に対しては、先ほど申し上げましたように大変に数が多いんですけれども、どこどこにこれは困ると言うと、やめますと言ってまたどこかで始めるように、イタチごっこというのが現状で、減ってはいるんだろうなという感触しかないんですが、よくわかりません。またふえているのかもしれません。 一番困ったのは、そのプロセスにおいて私ども手紙を出すんです、こういうものでは大変に困りますと。中には封をあけずに返すところがあります。日本の出版者にはそういう権利がないことがどうもばれているらしくて、ネット上には、出版者から来てももうみんな返せばいいんだよ、著作権者から来ないと相手にしなくていいんだよというのが、そんなことはないと思うんですけれども、封ぐらいあけたらどうだと思うんですけれども、そういうようなことが幾つかありまして、ちょっと我々も無力感を感じていて、何らかの権利が欲しいなというのが一つあります。 それはただ、現実には自炊訴訟というのがございまして、そのときもやはり同じようなことが起きたんですけれども、これについては一審では勝訴しましたけれども、やはり出版者には権利がないということで、五人の作家の方にかわりに立っていただいて、それを我々がバックアップする形で裁判をせざるを得なかった。 こういったことの積み重ねが、現在、こういった権利をぜひ欲しいということにつながった一つだと思います。 ○土肥参考人 御質問ありがとうございます。 削除要請なんですけれども、当然御案内なんだと思うんですけれども、この削除要請というのは、コンテンツのホルダーがプロバイダーにするわけです。プロバイダーは削除したという数字は出すんですけれども、出すといいますか、内々では出していると思うんですが、削除要請がどのぐらいあったからこれだけの削除をしたというふうなことをもし出すと、恐らく彼らに響いてくることはあるんじゃないかと私は思うんです。 つまり、これだけの削除要請がありながら実はこれだけのものしかしなかったということになると、何らかの影響があるというふうに私は想像するんです。ですから、そこのところはかなり抑えているんじゃないかと思います。 あと、著作権の世界は、信頼性確認団体というのが当然あるわけですので、信頼性確認団体が削除要請をすれば、一応プロバイダーは他の場合と比べると簡単に削除してくれるはずになっています。それは、実際そういうふうにされているのかどうかよくわかりませんけれども、著作権の世界というのは、大変な世界のように私にはちょっと感じるところがあります、インターネットでですね。 ロレアル・イーベイ、これはEUの裁判所の判決で非常に有名になった、ロレアルが原告で、イーベイ、プロバイダーがその被告になって、侵害訴訟で、これは商標なんですけれども、検査官がレポートを書くんです、日本でいうと最高裁の調査官がレポートを書くのと同じようなものだと思うんですけれども、その中で、ヨーロッパの場合、侵害品が七〇%あると書いてあるんです。同じようなケースで東京地裁知財高裁の楽天のケース、名前を出していいのかわかりませんけれども、被告が楽天のケースの場合は、侵害品の割合が少ないんですよ。 ある信頼性確認団体の方が言われるには、日本の場合、それは商標なんですけれども、商標の場合一、二%だと言われるんです。ヨーロッパで七〇で、何で日本の場合一、二%なのかというのは私にはよくわかりませんけれども、やはり何か理由があるんだろうと思っています。 ここは著作権の問題なので、本来著作権でお答えした方がよかったのかもしれませんけれども、御参考になればと思って。以上でございます。 ○瀬尾参考人 海賊版対策の実態ということで、実際には、例えば著作権団体、例えば写真でございますとか美術とかグラフィックもしくは文芸もございますけれども、直接著作者が裁判をしないと裁判ができないにもかかわらず、実は出版者さんがそれについてほとんどやってくださるということが多いという現実があります。 ただし、それにつきましても、数としてはそれほど多くはないというふうに訴訟は聞いております。といいますのは、訴訟費用とその被害金額を考えた場合、ほとんど赤字になってしまうということも多いというふうに聞いております。 ですので、先ほど前にお話が出ました、ADRという手法で訴訟に至らずに解決するとかの方法でないと実際には訴訟を起こしにくい、こういう状況があるのかなと思います。 そういったことに関しまして、ちょっとこれは先ほどのクール・ジャパンの方の話でアニメとかの方を例にとりますと、先ほども申し上げました、許諾を出すということで落とす。例えばアジアのある国におきまして非常に海賊版が流れていたときに、そこのトップブランド、最も大きなシェアに安くても許諾を出すんです。あなたのところに許諾を出して、あなたは正しいんだから、ほかのところはみんなにせものなんだからあなたが落としなさいと言って、その自国内で許諾したところに落としていただく。そして、逆にまた法的にも少しずつ追っかけていくということで海賊版対策は効果が出たという話を聞いております。 いかに出た海賊版を落とすかではなくて、海賊版が出にくい状況にするかということも含めて、許諾とそれから訴訟とをあわせていかなければいけないということを考えております。 実は、先ほど自炊という、これは自分で御飯をつくることじゃございませんで、本をデジタル化することなんですが、自分でやる分には権利制限の中で合法ですが、それを代行する業者というふうな形で今係争中でございます。私はそれにもかかわっておりましたけれども、著作者としては、許諾を出してはどうかと。要するにこれは違法なんだけれども、許諾を出せばオーケーである。したら、そういうニーズとか、いろいろ例えば体の不自由な皆さんとか、そういう方たちにも利用していただける形としてデジタル化が必要であるとすると、許諾を出していく方向で逆に海賊版を対策すべきじゃないかという考えを実は持っておりました。 そのようにいろいろな方法がございますけれども、単純に、違法であるからといってそれをたたくだけでは実は問題は解決しないというところが問題かなと思います。 ただ、それにつきましても、著作者がみずから行うということに関してはかなりハードルが高いので、ADRの普及もしくは出版社さんとタッグを組んでの対策というふうなことをしていかなければいけないのかなというふうに考えております。以上です。 ○青木愛 それぞれ大変参考になる御意見をいただきまして、ありがとうございました。 もう一点、三名のそれぞれの参考人にお伺いをさせていただきますが、先ほどから話が出ております著作隣接権について、それぞれのお立場でお伺いをさせていただきたいというふうに思います。 今回の法改正に当たって、四つの方策が検討されました。中でも、特にこの著作隣接権、午前中の質疑でもお伺いをしたんですけれども、レコード会社ですとか放送事業者にはこの隣接権が付与されておりまして、文化庁にお尋ねをいたしましたところ、これは国際条約で国際的な枠組みがあるんだというのが午前中の答弁でございました。 なぜ出版者にはこの隣接権というのが付与されない状態にあるのか。付与した場合、付与しない場合のそれぞれの立場でのメリット、デメリット、社会に与える影響、ユーザーに与える影響等々、それぞれのお立場でお聞かせをいただければと思います。お願いします。 ○相賀参考人 隣接権があればどんなに楽かと思ってスタートしたのは事実でございますが、やはりそれは、自動的に権利が付与されるということに対して著作権団体は非常に不安を持っていたということもございます。 今、その過去に戻っていろいろと言うのは余り生産的ではないと私個人的には思っていまして、むしろ、今回こうやって権利を持つことによって、もし隣接権があればきっと今までと同じようなやり方をしていただろうけれども、今こうして新たな段階に入った以上、各社一生懸命、デジタルの権利も版の著作権もちゃんと権利を結んで、それに対してそれを有効に今後生かしていく、この方向に切りかえていきたいと思っております。 ○土肥参考人 御質問ありがとうございます。 その点に関しては、先ほども御質問いただいたのでお答えしたところもあるんですけれども、確かにパブリッシャーとしては、原版というんですか、作成する、レコード製作者のように音を最初に固定をする、そういうレベルで隣接権が与えられるということは歓迎されるんだろうと思うんですけれども、先ほど説明させていただいたように、法制度というのは、さまざまな利益主体をどうやって調整するか、利益調整の社会的な手段というふうに認識しておるわけでありまして、やはりパブリッシャーのそういう権利というものが、クリエーターのその意思との関係で生まれてくるということの方が、利益調整手段としての著作権法の中に据わりがよかったということなんですね。 あと、それではその権利が強ければいいんですけれども、実は版ということになりますので、パブリッシャーが固定される、作成されるのはその版ということになって、著作物というわけではないわけですので、では、それで結構有効にパブリッシャーとして海賊版対策ができるかというと、必ずしもそうとも言えない面があるんだろうと私は思っています。 特にクリエーターの方で言われたのは、特に絵の方、美術の方は、自分たちの描いた絵そのものが、その原版をつくられるとそれが隣接権者の権利なんですかというふうに言われまして、なかなかクリエーターの方たちの賛成は得られなかったというわけであります。 出版関連小委としては、幅広い利益主体にとって歓迎される、受け入れられる制度ということになりますと、出版制度の見直しというところに行かざるを得なかったというところでございます。以上です。 ○瀬尾参考人 隣接権の得失というふうにお尋ねでございますけれども、自動的にできてしまう、権利が生じるということはもちろんなんでございますけれども、ただ、今、隣接権が生じたとき、その本に隣接権が生じるんですが、デジタルとかさまざまな形で出版物ができたときに、それに自動的に全てにいわゆる隣接権が及んでしまうとなると、かなり膨大な範囲に、つまり、デジタルも含めた相当広い範囲に権利が必要になってきてしまう。それだけ大きな権利が自動的に著作物に乗っかってしまうということに対して、非常に著作者団体は危惧を覚えた。 今、土肥参考人からも美術の話が出ましたが、絵本の作家が全部自分で絵も描き字も書いてつくって、ただそれを束ねて出版すると上に権利が乗っかっちゃうのは納得できないとおっしゃったことが結構印象的にあります。 自動的というのは、これまでの契約の中で解決していこうということについては、やはり一点、なかなか遅疑を生む部分があるんじゃないかなということがありました、権利者の中では。 その中で、ではどうしたらいいということで今のほかの手当てになったんですが、そういった意味では最もよくなかった点というのは、著作者と出版者の間に非常に相互不信を生んだ議論だったと思っています。お互いで、何を考えているんだ、お互い敵対しているんじゃないか。先ほど申し上げたように、契約は信頼関係の上で初めて正当にできる。その中で、あの議論によって、著作者と出版者の中で非常にお互いを相疑うようなそういう風潮と雰囲気が醸されたことが、何といっても著作隣接権議論の最大のマイナス点だというふうに思います。 ですので、早くその議論を出て、次にどうするかということを、こちらにいらっしゃる議連の先生方の御指導も含めて、そこから脱却して最後の終着点が見えたということでございますので、デジタル化の時代に非常に難しいということもございますし、範囲の設定も難しかったですし、著作者の遅疑も生んだし、大きな溝をつくったということですので、著作隣接権に関しては、また、海賊版に対しての効力云々の実効的な部分もございますけれども、私はそういうふうに捉えておりますので、速やかに今のような形で決着を見られたというのは、よろしかったのではないかなというふうに考えております。以上でございます。 ○青木愛 大変前向きな御意見、ありがとうございます。次の質疑につなげさせていただきます。 ありがとうございました。 |
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