▲TOPへ戻る

  | HOME | >活動記録>>発言録2014年4月4日 衆議院文部科学委員会


著作権法改正案に関わる審議
    

○青木愛

 よろしくお願いいたします。まず、権利処理の円滑化のための権利者間の連携についてお伺いをさせていただきます。
 今回の改正案におきまして、複製と公衆送信に関して別々に出版権を設定できることとされています。
 出版関連小委員会の報告書を拝見いたしますと、一体的な権利として制度化する場合と別個の権利として制度化する場合との差異は特段なく、本件について関係者の意見に隔たりがあるのは、電子出版についての契約慣行が十分に確立していないことが一因とした上で、著作権者と出版者との間に信頼関係が構築されれば、紙媒体での出版と電子出版に係る権利がおのずと同一の出版者に一体的に設定されていくことが想定されるというふうにございます。
 本改正案の意図としますと、著作権者等に配慮をして、複製と公衆送信は別々に出版権を設定できるといたしましたが、海賊版対策等を考慮いたしますと、今後一体的な設定が望ましいというふうに考えているということの御報告ということでよろしいのでしょうか。


○河村政府参考人

 紙媒体での出版の権利と電子出版の権利を一体の権利とするか否かについて文化審議会での審議が行われたのは、今、お話しをいただいたとおりでございます。
 この議論では、いずれをとりましても、制度面では、例えば消滅請求のあり方とか、それから出版権を設定するといったときに、出版権といっただけではやはり何が含まれているかわからないので、しっかりと、紙と電子の両方なのか、あるいはいずれかなのかということを契約の中で明示すべきだということで合意がされておりますので、制度的な意味では、一体かそうでないかということでの特段の差異はないのではないかということになったのでございます。
 そうではありますけれども、出版者がこれまで果たしてこられた社会的な役割や、出版、電子出版の実態を踏まえて、具体的な立法の方法は政府で検討するようにということが報告内容でございました。
 それを受けとめて今回の改正案では、電子出版の権利を紙媒体での出版の権利と同じ出版権の中に包含をいたしております。現行の出版権制度、著作権法の第三章に書かれております制度は、出版を引き受け、企画、編集等を通じて出版物を作成し世に伝達するという出版社の役割の重要性に鑑みて特別に設けられたものでありまして、改正案の意図としても、その趣旨は従来から変わっておりません。



○青木愛

 さらに今回の改正案では、出版権者が他者に複製または公衆送信の許諾ができることとなっています。
 このことによって、よい意味で柔軟なビジネス展開が可能になろうかというふうにも思うわけでございますが、この点についてのこの改正の狙いについて、お聞かせいただきたいと思います。


○河村政府参考人

 現在でも、実は、出版権が設定されている著作物について、著作権者及び出版権者が出版権者以外の者に文庫として出版することを許諾するというような実態がございます。
 また、今後は、出版権の目的となっている著作物について、出版権者みずから公衆送信を行うだけでなく、第三者にも公衆送信を行わせるということも考えられるわけでございます。
 そこで、本法案では、出版権者が第三者に対し複製または公衆送信を許諾することができることといたしております。
 これにより出版権者は、みずから出版や電子による出版を行うだけではなくて、著作権者の承諾のもとに第三者からも著作物の伝達を行うことが可能となるため、委員御指摘をいただきましたように、幅広いビジネス展開を行うことができるようになると期待をいたしております。



○青木愛

 改正案の第八十条三項によりまして出版権者が他者に複製等を許諾できるということになっているわけでございますが、第三者から見た場合、この権利関係が現状よりさらに見えにくくなるという懸念も一方でございます。
 そもそも、出版に際して関係者間で明確な契約が交わされない例も多々あるというふうに伺っています。コンテンツ産業振興の点からも、この著作物の権利関係を明確にして、第三者にもわかりやすくあらわす必要もあるかというふうに考えています。
 その点で、出版権の登録制度というのがございます。大変有効な制度と考えておりますが、著作権法に規定がありながら、現在余り活用されていないと伺っておりますが、この登録制度が活用されていない今の背景と、今後のその活用の取り組みについてお聞かせをいただきたいと思います。


○河村政府参考人

 現行法では出版権の設定などについて登録制度というものが設けられておりますが、これは、二重設定が行われたような場合、例えば、著作者の人が一者に出版権を設定し、また別の方とも出版権を設定してしまったというような二重設定が行われたような場合において、その優劣を決するための対抗要件を付与するもので、財産権としての出版権について取引の安全を図るという意義を持つものでございます。
 ですから、登録をしなければ出版権そのものの効力が発生しないとか、侵害に対する請求ができないというものではございません。
 改正案では、現行の紙媒体についての出版権と同様に、電子出版についての出版権の設定についても、登録の対象となるということで設計をされております。
 出版権登録制度がそれほど利用されていないのではないかということでございますけれども、これは、登録免許税が一件三万円かかるということがありましたり、また、申請書の内容についてもう少し何か変えてもらえないかといったような要望も一部いただいております。
 これから、出版者が登録制度を活用しやすくするような環境の整備ということは重要であると考えておりますので、今後、出版者からの要望の把握などにも努めてまいりまして、必要があれば、改善をしっかり図ってまいりたいと思います。



○青木愛

 ありがとうございます。今御答弁にありましたとおり、やはりどこの出版者がどの著作物の出版権を持っているのかということを把握しておくことが、新たな契約をする際に、誰と契約をすればよいのか等々大変わかりやすくなるだろうなというふうに思います。出版権者がまた第三者にこの許諾ができるということになりましてますます契約関係が複雑で見えにくくなるものですから、御指摘をさせていただきました。
 次の質問は、日本書籍出版協会の資料によりますと、世界で出回っている漫画の海賊版の元データ、ほとんどがこの日本国内でスキャンされているということでございますが、この海賊版対策の点から考えまして、別々に出版権が設定された場合などには、権利者や許諾を受けた者など、関係者の連携が大変重要であろうかというふうに思いますけれども、文化庁といたしましてどういった支援を今後考えていらっしゃいますでしょうか。


○河村政府参考人

 出版権の制度は、著作権者と出版者の設定契約を基礎とする制度ですので、今後は、著作権者と出版者双方が協力して新たな出版権制度を踏まえた契約慣行が形成されるように努められることが、まずは、関係者の連携を強化する観点からも極めて重要と考えております。
 文化庁としては、このような契約慣行の形成に資するために、改正法の趣旨、内容等について、施行までの間に、著作権者、出版者等々関係者に対して十分に周知してまいりたいと考えております。
 また、新たな出版権制度が効果的な海賊版対策に活用されるということも期待されますので、海賊版対策に有効な出版権設定契約のいわばパターンといったものも関係当事者に御説明して、連携を促進できればと考えております。



○青木愛

 ありがとうございます。
 そして、著作権者と出版者の間にしっかりとした信頼関係が構築されるような公正な契約慣行の確立にもぜひ御尽力をお願いをしておきたいと思います。
 次に、小規模出版社の対応について若干お伺いをいたしますけれども、改正案第八十一条におきまして、従来と同様に、電子出版につきましても、原則として六カ月以内に発行する義務が出版権者に課されております。
 著作権者の権利の保護の点からは大変望ましいことと考えておりますけれども、大手出版社はともかくといたしまして、小さな出版社が複製と公衆送信について一体的な出版権の設定を行おうとする場合、電子書籍の編集の手間がふえる、一方で当該書籍の売り上げは余り変わらないであろうというふうに考えられることから、大変大きな負担になるのではないかというふうに考えます。
 この電子出版に関しまして、小規模な出版社などにはどのように対応されていくおつもりか、お伺いをさせていただきます。


○河村政府参考人

 出版につきまして、企画、編集、構成から世に出るまでにさまざまな過程があるわけでございますけれども、出版権の設定を受けた出版者がそれを全て全部自前でやらなければいけないということではございませんで、外部の力を委託その他の契約によってかりていくということは、十分実態としても、また法制度上もあり得るわけでございます。
 そのような、例えば中小の出版社の方々が力をかりる場として、一つには、出版界からもお話がございました出版デジタル機構といったようなところもございますので、そうした機構の活用なども通じながら、電子書籍市場が発展していけばということを期待をいたしております。
 このような、国内の電子書籍を含めた全体としてのビジネスの発展に向けた民間事業者の取り組みにつきまして、私どもも継続的に注視をし、関係省庁とも連携をしてまいりたいと思います。



○青木愛

 済みません、最後に大臣の御所見を伺って質問を終えさせていただきたいと思います。
 我が国に四千社あると言われる出版社でございますが、本好きの国民性ですとか再販制度に守られまして、世界に誇る、多様な書籍文化を築いてまいりました。近年、書籍全体の売り上げが右肩下がりの中で電子書籍の売り上げは伸びておるわけでございますが、今後、電子書籍の出版、流通に関しましては、ダンピングや、また、今御答弁の中でもちょっと懸念する部分は、やはり寡占化の懸念もあろうかというふうに思います。著作者や出版者の利益、ひいては書籍文化の衰退のおそれもあろうかというふうに思います。
 政府は、知的財産推進計画二〇一三におきまして、電子書籍の本格的普及促進を後押しをしています。我が国の多様な書籍文化をいかに守っていくかについて、最後にお伺いをさせていただきます。


○下村国務大臣

 世界に誇る日本文化、大きな資産であり、我が国最大の強みであるというふうに思います。
 その中でも書籍等の出版文化は、我が国の文化や知識を創造、普及し、これを次世代に継承するに当たり重要な役割を担い、我が国の活力ある社会の実現に寄与してまいりました。
 改正案により出版権者は、みずからインターネットに出回っている海賊版を差しとめること等ができるようになり、紙媒体による出版文化の継承、発展と健全な電子書籍市場の形成が図られ、我が国の多様で豊かな出版文化のさらなる進展が期待されるところであります。
 そのため、文科省としては、改正法の趣旨や内容等について、著作権者や出版者に対して十分周知をし、新たな出版権制度が効果的に活用されるよう取り組んでまいりたいと思います。
 文科省においては、出版文化を振興するため、改正案のほかにも、読書活動の推進、学校図書館の充実、日本の文学や漫画等の海外発信など、活字文化の振興にさらに努めることによりまして、出版文化の振興にさらに努めてまいりたいと思います。



○青木愛

 ありがとうございました。