▲TOPへ戻る

  | HOME | >活動記録>>発言録2014年6月4日(午後) 衆議院文部科学委員会


学校教育法・国立大学法人法改正案に対する質疑
    

○青木愛

 生活の党の青木でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。
 まず、下村大臣に、この大学改革そのものの目的についてお伺いをしたいというふうに思います。
 安倍首相が五月六日、経済協力開発機構の閣僚理事会の基調演説の中で、経済発展とイノベーションのために高等教育改革を行うという立場を明確にされました。さらに、学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な職業教育を行う、そうした新たな枠組みを高等教育に取り込みたいと考えています、そう述べられておられました。
 この高等教育の新たな枠組みの中で、いわゆる高等教育段階における実践的な職業教育の充実ということを求められているんだろうというふうに思います。
 午前中の参考人質疑にもございましたけれども、手っ取り早く企業に役立つ人材育成を図ろうとしているのではないか、また、公立高校の無償化のときにも指摘をさせていただきましたが、自民党の憲法草案の中にもありましたように、いよいよ国の発展のために人材育成が行われるのではないかという危惧を私自身も持つわけでございます。
 やはり学生の求める学問の多様性というものは確保されなければならないというふうに考えますが、産業競争力のためだけの高等教育改革になりやしないかという危惧の声が上がっていることも事実でございます。
 これらも踏まえて、下村大臣が、現在大学を取り巻く社会情勢と大学に対する社会の要請の変化、これをどのように認識され、どのように変わっていくべきとお考えになっているのか、下村大臣の御所見をお伺いしたいと思います。


○下村国務大臣

 大学の自治そのものを否定するつもりはありませんし、これは法律で明確に書かれているものでありまして、それは当然尊重すべきものであるというふうに思います。ですから、実社会においてすぐにそれが実践的に役立つかどうかは別として、例えば文学分野とか哲学とかロシア文学とかフランス文学とか、そういうことを別に否定するつもりは全くないわけであります。
 安倍総理が、五月の六日にパリで開催されたOECD閣僚理事会での基調講演において、大学改革について、モノカルチャー型の高等教育では斬新な発想は生まれない、だからこそ教育改革を進めている、学術研究を深めるだけでなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な職業教育も行う、そうした枠組みを高等教育に取り込みたいと述べられたわけであります。
 これは、教育再生実行会議における学制改革についての議論を踏まえつつ、グローバル化の進展など、社会が急激に変化する中で、我が国が今後も世界に伍して発展し続けるためには、社会の多様な要請を的確に受けとめ、さまざまな分野で活躍できる人材の育成に大学が一層力を発揮すべきであるという認識のもとで発言をされたものというふうに理解しております。
 先ほども御質問の中にありましたが、今の大学は、学生が勉強していないというのは、学生が怠けているということもあるかもしれませんが、それ以上に、大学側が的確なカリキュラムなりあるいは編成なりをしていないために、そもそもそれほど価値を置いていないということを大学側は謙虚にやはり見直すべきではないかというふうに思います。そういう中で、大学で勉強したことがそのまま、もちろん多様な価値観がある中で、多様なニーズがある中ですから、一方で、社会に役立つための部分についてもより力を入れるべきではないかということであります。
 いずれにしても、大学の教育研究におきましては、量的な拡大と質的な向上をともに進めていくことが不可欠であると考えております。



○青木愛

 ありがとうございます。
 私も、現在の社会経済あるいは自然環境、こうした変化に伴う、いわば地球規模の諸課題への対応、そのためのグローバル化あるいはイノベーションの創出というのは大変重要な視点であって、社会的要請に応えるための大学改革そのものの必要性は私も同じように認識をしております。
 その認識の上で、このガバナンス改革がどのように機能していくかということについて伺っていくわけなんですけれども、今回、全大学一律にこの法律を当てはめるということが果たして適切なのかどうかというところをまずお伺いさせていただきたいというふうに思います。
 大学の枠組みを定める法律は大学の設置者により異なり、国立大学法人については国立大学法人法、公立大学法人については地方独立行政法人法、また私立大学については私立学校法でございます。
 また、それぞれの大学の沿革や規模、教育内容、研究内容も異なる中で、学長の権限やガバナンスについて、学校教育法の改正によって一律に規定しようという趣旨は何であるか、お伺いをさせていただきます。


○吉田政府参考人

 学校教育法は、国公私の別を問わず、全ての大学に適用される法律でございます。
 今回この改正内容としております学長と教授会の関係を明確化すること、また、副学長の役割を強化すること、これは、それぞれの大学の学長がリーダーシップを発揮しやすい環境の整備を目指すものでございまして、今、国公私の設置主体を問わず大学改革が求められる情勢の中で、これらの推進のためには学校教育法の改正が必要であるというふうに考えたものでございます。



○青木愛

 既に多様なガバナンスの仕組みの中で現に動いている大学を一律に縛るのは問題が大きいという声も上がっていることも指摘をさせていただきながら、法改正に至る経過の確認として、本来省令で定めるお考えがあったというふうに伺っておりますが、省令で定める場合はどういったお考え、構想であったのか、お伺いをさせていただきたいと思います。


○吉田政府参考人

 一時期、省令による対応というものも検討をさせていただきましたけれども、今回、大学のガバナンスの関係につきましては、権限と責任のあり方が明確でない、また、意思決定に時間を要し、迅速な決定ができない、学内の都合が先行し、十分に地域や社会のニーズに応えるような大学運営が行われていないなどの課題が指摘されてきたところでございます。
 このような課題を解決するためには、現行の学校教育法におきましては学長と教授会の関係が不明確となっているため、学長は決定権を有し、教授会は学長に対して意見を述べる立場にあることを明確化する必要があったこと、また、学長補佐体制の強化ということで、副学長の権限の拡充を行う必要があったこと、これらが学長のリーダーシップを確立する上で必要である、こういうふうに考えました結果、省令改正ではなく法律改正が必要であるというふうに判断したものでございます。



○青木愛

 ありがとうございます。省令改正でも済んだ可能性もあったということだというふうには思うんです。現行法でも徹底すればできたのかなというふうに思うのですが、法改正によってより権限と責任を明確化するに至ったということであります。
 これは産業界といいますか経済界の意向も大分影響しているというふうにも伺っておりまして、その是非ではなくて、法改正に至ったことで、これがよりよい産学連携といいますか、そうした形でその取り組みの改革の推進が進めばよろしいわけなんでありますけれども、そこに期待をしながら、また危惧の念も抱きながらというところで質問をさせていただいているところでございます。
 質問はかわりますが、今回、法改正に至ったその前提として、先ほども質問にございましたけれども、実際、どのような大学で、どのように教授会が関与したことで改革が阻まれたのか、その具体的事例を明確に教えていただきたいというふうに思います。


○吉田政府参考人

 今回の改正は、中教審の審議まとめにおきまして、教授会の審議事項が大学の経営に関する事項まで広範に及んでおり、学長のリーダーシップを阻害しているとの指摘があること、あるいは、教授会は法律上審議機関として位置づけられており、審議結果に対して直接責任を負わないものとされているにもかかわらず、事実上議決機関として意思決定を行っている場合も多いこと、こういうことなどの指摘を踏まえまして、教授会の役割を明確化しようとするものでございます。
 文部科学省におきまして全ての大学、学部を対象として行いました調査におきまして、次のように、さまざまな事項について教授会に決定権限があるとの回答を得ているところでございます。
 例えば、学内規程の制定、改廃に関しましては三七%、学部長や研究科長等の選任に関することにつきましては三七%、予算の配分、執行に関することにつきましては三三%、また、組織の編制に関することにつきましては一九%というような割合で教授会の関与が強い事例が見られるところでございます。
 また、教授会が反対したことによりまして学長による大学経営が阻害された事例としては、具体的には、キャンパスの移転計画や組織再編が教授会の反対によって実現できなかったり、実現まで非常に長い時間を要した事例、あるいは学長が希望する副学長や学部長の人事が教授会の反対によって実現できなかった事例などを承知しているところでございます。
 中教審におきましては、こうしたデータ等も踏まえながら議論が行われてきておりまして、その結果に基づいて今回法改正をお願いしているところでございます。
 


○青木愛

 ありがとうございます。今回の教授会の役割の明確化ということについてでありますが、平成十六年の国立大学法人法制定の折には、この教授会の役割を明確化するところまでは不要だという判断があったかというふうに思います。それで、今回この法改正に至ったわけでございますが、先ほどもまた質疑の中でかなり詰めた議論がございましたけれども、私からも確認をさせていただきたいのは、改正案の九十三条の第二項と三項の関係でございます。
 まず、第二項の「教育研究に関する重要な事項」と第三項の学長等がつかさどる「教育研究に関する事項」、これはそれぞれどのようなものを想定しているのか、改めてお伺いをいたします。


○吉田政府参考人

 九十三条の二項のところで、入学、卒業、課程の修了と学位の授与の関係のほかに、三号では、学長が決定を行うに当たって、専門的な知見を有する教授会の意見を聞くことが必要であると認めるものというのを挙げております。具体的にこれにどういうものが当たるかということにつきましては、これはもう先ほど来の議論の中でも出てまいりましたけれども、具体例としては、教育課程の編成や教員の教育研究業績等の審査といったものがこれに該当するということでございます。
 一方、九十三条第三項として想定される事項としては、九十三条二項に規定する事項のほか、教育研究に関する事項として、これは各大学が実情に応じて判断をされるということになりますけれども、具体的な内容としては、例えば授業担当科目の決定を行うことですとか、共用設備の導入に関する検討をすることですとか、あるいは指導教員の変更、それから留学生の受け入れ等々、さまざまなものがここには入ってくるだろうと思われます。



○青木愛

 それでは、この二項に定める「意見を述べるものとする。」という義務的な事項と三項にまとめられました「意見を述べることができる。」という裁量的事項、この区分はどのような基準で検討されたのでしょうか。


○吉田政府参考人

 九十三条二項は、教育研究に関する重要事項のうち、学長が決定を行うに当たって、学長が教授会に意見を聞くことが適切であると考えられる事項、これが二項の三号のところに入ってくるわけでございます。三項の方は、もうこれはそれ以外の事項というふうに切り分けすることができると思います。



○青木愛

 そうしますと、教育課程の編成や教員の教育研究業績の審査は義務的事項であり、先ほどおっしゃった授業担当科目とか設備ですとか留学生等々の検討事項については裁量的事項という形になるということでよろしいんでしょうか。それぞれは重なることはないということでよろしいんでしょうか。


○吉田政府参考人

 三項の方は、法律上、前項に掲げるもののほかということになっておりますので、ダブることはございません。



○青木愛

 これは、そもそも決めておくことではなくて、大学側というか学長側というか、そちらの裁量に任せるということなんですか、それぞれの中身については。


○吉田政府参考人

 九十三条二項三号は、学長が必要と認めるものとなっておりますので、そこは学長で御判断をいただくということになります。
 三項は、二項に掲げております事項以外の事柄ということでございますので、教育研究に関する事項ということではございますけれども、特に誰かがそこで決めるというものでもございません。



○青木愛

 そうしますと、その内容については大学ごとに異なるということでよろしいんですか。


○吉田政府参考人

 そこは大学によって多様だと思います。



○青木愛

 ありがとうございます。
 そしてもう一点お伺いをしたいのですが、三項の、教授会は学長等がつかさどる教育研究に関する事項について審議しとございます。学長等が意見を求めないことについても、教授会の判断で審議することは認められるというふうな解釈でよろしいでしょうか。


○吉田政府参考人

 大学における教育研究の充実のために、学長等の求めの有無にかかわらず、教授会が教育研究に関する事項について審議をするということは、これまた重要なことでもございますから、学長等が意見を求めないことについても、教授会の判断で審議をすることは、これはもう自由でございます。



○青木愛

 ありがとうございます。この場合の審議というのと、現行法の審議ということの意味するところは同様に考えてよろしいということですか。


○吉田政府参考人

 審議という言葉は、「くわしく事の可否を論議・検討すること。」と広辞苑では書かれてございます。現行法の審議もこのような意味でございまして、本来、決定権を含意するものではございません。しかしながら、実態として、教授会による審議が決議を含むものとして運用されてきたという指摘も踏まえまして、今回の改正をお願いしているということでございます。



○青木愛

 先ほどの参考人質疑の中で、これは田中参考人の方から、それぞれの大学ごとに、この新しい法律を、その大学の目的に照らして運用すればよいのではないかという御答弁をいただいたのですけれども、この今の審議ということについても、教授会の判断で審議をすることは法律違反ではないし、それは、それぞれの大学がそれぞれの方針に照らしてこの法律を運用してもよいということでよろしいんでしょうか。


○吉田政府参考人

 今回の九十三条の改正は、学長が最終決定権を有するということを前提といたしまして、教授会との関係を明確にしよう、こういうものでございます。教授会がそれぞれの学部等の教育研究において重要な役割を果たしておりますから、その意味では、それぞれの大学の判断によって審議をされることについては、これはもう自由であるということでございます。



○青木愛

 ありがとうございます。それでは、副学長の職務の明確化とともに、学長の補佐体制も大変強化をされるということでございます。学長に対するチェック機能について、私からも確認をさせていただきたいと思います。
 今回の改正案で、教授会の権限の明確化、また、副学長にかかわる規定の整備を通じて、学長補佐体制が強化をされます。副学長は、学長の命を受けた補佐、特定の個人の学長を助ける意味合いが強過ぎて、全学の副学長としての機能を果たせるのかという心配の声も上がっております。
 そういう意味においても、学長の業務執行に対するチェック機能について、具体的にどのように構築されるお考えかを伺わせてください。


○吉田政府参考人

 学長に対するチェックする仕組みの御質問でございますが、まず、学長にはすぐれた人物が求められるということがございますが、学長をチェックするための仕組みとしては、監事による監査や、それから大学の自己点検・評価、また認証評価等の評価がございます。また、理事会や学長選考会議等の学長選考組織による業務執行状況の評価などの仕組みが存在をしております。
 中央教育審議会の審議まとめにおきましても、学長の業務執行状況について、学長選考組織や監事による恒常的な確認が必要であるという提言がなされておりまして、私どもとしては、この法律改正が成立した後に、施行通知等でその趣旨を徹底してまいりたいというふうに思います。
 また、こうした仕組みが十分でない場合につきましては、学長の任命権者である文部科学大臣や理事会が学長を解任することも制度的には設けられております。



○青木愛

 ありがとうございます。
 それでは、国立大学法人法の改正の方に移らせていただきます。
 国立大学が担う社会的な役割、個々の国立大学のあり方について、いわば文部科学省主導で、各大学の強み、特色、社会的役割、これを整理するミッションの再定義が行われました。国立大学の機能強化に向けた取り組みを促すように、国立大学法人の運営費交付金の配分方法等についても抜本的な見直しが図られるというふうに伺っております。
 今後の方針、見通しについてお伺いをいたします。


○吉田政府参考人

 文部科学省としましては、平成二十五年十一月に策定いたしました国立大学改革プランを踏まえまして、平成二十七年度までの改革加速期間において、各大学の強みや特色、社会的役割を明確にするミッションの再定義を踏まえた機能強化に取り組む大学に対しまして、重点支援を行うこととしております。
 また、平成二十八年度からスタートいたします第三期中期目標期間における国立大学法人運営費交付金や評価のあり方につきましては、改革加速期間中における各大学の機能強化への取り組みの成果をもとに、平成二十七年度中に検討をし、見直しを進めていく予定でございます。
 具体的には、各大学が、強みや特色、社会経済の変化や学術研究の進展を踏まえて、教育研究組織や学内資源配分を恒常的に見直す環境を運営費交付金の配分方法等において生み出すこと、また、新たな改革の実現状況を、その取り組みに応じた方法で可視化、チェックし、その結果を予算配分に反映させるPDCAサイクルを確立すること、こういったものを目指しながら、ただいま検討を進めているところでございます。



○青木愛

 最後の質問になりますが、先ほどの参考人質疑の中でも、OECDの中で、日本が、高等教育の予算が対GDP比〇・五%と、平均の一%以上の半分だということの御指摘がありまして、まずは予算をふやすことがこの改革の第一歩ではないかという御答弁をいただいたところでございます。
 現在八十六校、国立大学がございまして、今後、総合大学、単科大学、さまざまございますが、全国的に均衡のとれた配置、教育の機会均等を保障するという国立大学のこれまでの趣旨、また、その政策の方針と逆行するのではないかという危惧を持つものでございますが、その点について下村大臣の御所見をいただければと思います。


○下村国務大臣

 国立大学は、全国的な高等教育の機会均等を確保するということについて重要な役割を担うこと、これは引き続き求められているところであります。こうした役割を果たすためにも、その有する機能強化、これを自主的、自律的に取り組んでいくことが必要であると考えます。
 ミッションの再定義は、各国立大学がこうした機能強化に取り組むための出発点として、各大学の強みや特色、社会的役割を明らかにしつつ、社会の要請に応えていくために行われるものでありまして、従来の政策と異なるものであるという御指摘ではありません。
 また、ミッションの再定義は、大学の自主的、自律的な取り組みを尊重しつつ、各国立大学と文部科学省が意思疎通の連携を行いつつ共同して行ったものでありまして、文科省のみの判断ということではありません。



○青木愛

 ありがとうございます。社会的要請に応えていくためには、大学がより一層社会に開かれたものとなることが必要でありますが、今回のこの法律改正は大変大きな改革だというふうに思っておりまして、もっともっと国民世論も踏まえた十分な審議が必要であることも申し述べながら、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。