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  | HOME | >活動記録>>発言録2014年6月6日 衆議院文部科学委員会


学校教育法・国立大学法人法改正案に対する質疑
    

○青木愛

 生活の党の青木でございます。本日もどうぞよろしくお願いを申し上げます。
 まず、これは報道の限りでございますが、このたびの、今春と昨春の都立高校入試での採点ミスについてお伺いをしなければなりません。現段階でどのような報告を受け、また御指示を発せられているのか、お伺いをさせていただきたいと思います。
 報道によれば、実質一日で採点を求められ、また、国立大学の二次試験の対策のためにも生徒指導をしなければならないと、業務の大変さを多くの校長先生がまた口をそろえておられるのも報道で聞いているところでございます。年明けからの受験シーズンは特に学校現場の作業がピークになるのだというふうに思ってもおります。
 今後、さまざまな視点からの対策が必要ではないかと思いますが、この点について、まず下村大臣の御所見を伺っておきたいと思います。


○下村国務大臣

 報道及び東京都からの連絡によりまして、東京都の公立高等学校入学者選抜の学力検査におきまして採点ミスがあったことは承知をしております。
 東京都は、今回の採点ミスの原因として、学校や教員がなれ過ぎていたのではないか、また点検の甘さ、それから、御指摘のように採点期日の短さ等を挙げておりまして、今後、有識者による調査委員会を中心に、徹底した原因究明と再発防止改善策を検討するとのことであります。
 高等学校の入学者選抜は、生徒の立場を第一に考え、ミスのない実施がなされるべきものであります。
 文科省としては、今後、早急に東京都から詳細な報告を受けるとともに、各都道府県等の高校入試の担当者を集めた場におきまして、各都道府県の採点ミス防止の取り組みに係る情報を共有するなどいたしまして、全国的な注意喚起を促してまいりたいと考えております。



○青木愛

 それでは法案審査に入らせていただきます。
 まず、グローバル化の中での大学のガバナンスについてお伺いをいたします。
 現在、グローバル化の進展の中で、国際的な大学間の競争が激化をしております。優秀な教員や留学生は、国籍を問わずその獲得を争うという状況も生じているかというふうに思います。日本の大学は、現状におきまして、外国人の教員比率も、また外国人の留学生の比率も低いと承知をいたしております。
 政府はそれぞれを上昇させるための政策を実施しているところと伺っておりますが、今後の我が国の大学のガバナンスのあるべき姿を考える際には、こうした教員や学生等構成員の多国籍化、また流動化の観点からも検討する必要があるかと考えますが、その際に具体的に留意すべき事項等、政府の御認識をまずお伺いをしたいと思います。


○吉田政府参考人

 お答えいたします。大学は、学術の中心として真理を探求し、新たな知見を創造する場であり、本来、多様性がその重要な要素であると考えております。とりわけ、社会経済のグローバル化が進み、世界の大学が優秀な学生や研究者の獲得にしのぎを削る中、日本の大学も、海外から優秀な人材を引きつけるだけの実力や魅力を備えていくことが必要でございます。
 しかしながら、我が国の大学は、例えば世界大学ランキングによる評価でも、外国人留学生や研究者の比率など、国際面での評価が低い傾向がございまして、国際化の推進というのが大きな課題であるというふうに認識をしております。
 このため、これまでの施策の成果も踏まえつつ、今年度から新たに、徹底した国際化を推進し国際競争力の向上を図ろうとする大学をスーパーグローバル大学として三十校程度選定し、重点支援をすることとしております。
 各大学が時代のニーズに的確に対応して改革を進めていく上でも、大学のガバナンスの強化というのは重要でございまして、今回の法改正はそれに資するものであるというふうに考えております。



○青木愛

 グローバル人材は英語を話せることではないとよく言われますが、私も、真のグローバル人材は、我が国の伝統や文化に根差した教養を身につけているものだというふうに認識をいたします。経済界の目先の利益にかなう人材の育成だけではなく、学生が高等教育を受けた者としてふさわしい教養を身につけられるように、真のグローバル化につなげていただきたいと願うものでございます。
 グローバル人材を内から支える知的基盤の構築に向けた大学教育のあるべき姿について、政府の認識を確認しておきたいと思います。


○吉田政府参考人

 お答えいたします。グローバル人材の捉え方についてはさまざまなものがございますけれども、例えば、平成二十三年に文部科学省の産学連携によるグローバル人材育成推進会議が取りまとめた報告では、「グローバル人材とは、」「日本人としてのアイデンティティを持ちながら、広い視野に立って培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値を乗り越えて関係を構築するためのコミュニケーション能力と協調性、新しい価値を創造する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間」というふうにしております。本年五月の教育再生実行会議第三次提言におきましても、日本人としてのアイデンティティーと幅広い教養を持ち、世界に打って出たり、外国人を迎え入れて交流したりすることのできる人材の育成の重要性が提言されているところでございます。
 これらの提言でも指摘されているとおり、これからの時代に生きるグローバル人材には、日本人としての幅広い教養が不可欠であるというふうに考えられます。
 このため、文部科学省としては、学生の主体的な学びを促すための大学教育の質的転換に取り組む大学への重点支援を行いますとともに、大学の国際化に関する事業を進めるに当たりましても、我が国の歴史、伝統文化等への理解を深めるなど、日本人としてのアイデンティティーを育む教育の充実を通じて、世界で活躍できる人材の育成に取り組んでいるところでございます。



○青木愛

 ありがとうございます。
 次に、学長のリーダーシップの強化に向けた、資金面からの支援についてお伺いをさせていただきます。
 大学にはイノベーション創出の役割も期待されていますが、その役割を果たすために、研究投資を行おうとする際に、資金面での困難が生じていると伺っています。
 まず、基盤的経費であります国立大学運営費交付金や私立大学運営費補助金は削減傾向にあります。国立大学法人の経常収益に占める運営費交付金の割合は、法人化直後の平成十六年の四六%から平成二十四年度では三六%と、一〇%も低下をいたしております。
 競争的資金については、資源配分主体が多くの提案の中からよいものを選んで交付することで資金利用の効率性は高まったと思いますが、近年、間接経費が削減される傾向があり、学長の資金配分の自由度は下がってきていると伺っています。
 そこで、今後は、基盤的経費や間接経費を拡充し、いわゆる学長の裁量経費をふやすことで、資金面からも学長のリーダーシップ強化を支援すべきではないかというふうにも考えますが、政府の御見解をお伺いをいたします。


○吉田政府参考人

 お答えいたします。各大学におきまして学長がリーダーシップを発揮して大学改革を進める上で、学長が全学的な見地から学内資源配分を適切に行えるようにすることが極めて重要かつ有効でございます。
 例えば、国立大学では全ての大学において学長裁量経費が設定されているところでございますが、さらにこうした経費を充実するため、国としては、基盤的経費や競争的資金の間接経費を確実に措置することが重要な方策の一つと考えております。
 こうした中、文部科学省としても、厳しい財政状況の中ではございますが、大学の基盤的経費の確実な措置に努めておりまして、平成二十六年度予算におきましても、国立大学法人運営費交付金や私学助成の増額を図ったところでございます。
 また、競争的資金の間接経費につきましては、第四期科学技術基本計画において「全ての競争的資金制度において、直接経費を確保しつつ、間接経費の三〇%措置を実施するよう努める。」とされているところでございまして、文部科学省の所管する競争的資金の全てにおいて大学への間接経費三〇%を確保しているところでございます。
 今回の法案により、学長の補佐体制の強化や学長と教授会の権限の明確化を図るとともに、各大学が学長裁量経費を充実できるよう支援することにより、各大学でそれぞれの特性を生かした改革が学長のリーダーシップによって進められるよう、文部科学省としてもその環境醸成にしっかりと努めてまいりたいと存じております。



○青木愛

 ありがとうございます。それでは、大学生の授業料負担にかかわる件についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 政府は、平成二十四年、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、社会権規約の留保の撤回を行ったことにより、「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。」という条文全体に拘束されることになったと承知をいたしております。
 一方、去る五月三十日付の財政審が公表いたしました財政健全化に向けた基本的考え方の中で、「教育研究組織や学内資源配分の見直しを行う大学や、寄附金の獲得、授業料引上げによる自己収入の増などの教育研究環境充実に向けての自助努力を率先して行う大学については、重点的な支援を行う。」とございまして、授業料引き上げが奨励されているように見受けられます。
 学生及びその保護者は、下宿費等の生活費、または受験料等の負担は大変大きく、経済的な理由により大学で学ぶことを諦める者も多い中で、この財政審の方針は学生にさらにしわ寄せをするもので、到底受け入れられないものと考えております。
 学生や保護者の経済的負担軽減に向けて、この財政審の方針に打ちかつための下村大臣の決意をぜひここでお伺いをしておきたいと存じます。


○下村国務大臣

 これはおっしゃるとおりでありまして、あの財政審の指針は到底受け入れるわけにはまいりません。
 国立大学の授業料については、国において、標準額と、その一定の範囲内で各大学が標準額を超える授業料を設定することができるよう、省令で定めております。
 これは、法人化後におきましても、国立大学は、学生が経済状況に左右されることなく、学生の能力、適性により進学をすることを可能とし、教育の機会均等等の確保といった重要な役割を担っていることを踏まえたものでありまして、先ほど宮本委員から、何か経団連が言っているから文科省がすぐにでもそれに沿って上げるかのような指摘がされましたが、全くそういう考えは持っておりませんし、これ以上、国立大学においても授業料を上げるということになれば、これは、学生の機会均等を特に貧困家庭において奪うということになりかねないわけでございまして、文部科学省としては、各大学における授業料の具体的な額の設定に当たっては、現行の趣旨も踏まえながら、学生や保護者、社会に対して説明責任を果たす観点からも、負担のないような配慮については、十分対応していく必要があると考えております。



○青木愛

 大変心強い御決意を伺ったというふうに思います。ありがとうございます。
 それでは、この九十三条二項第三号につきまして、修正案の提出者にまずお伺いをいたしたいと思います。
 この学長が定めるものの対象として、あらかじめ、この「教育研究に関する重要な事項」の中に、教育課程の編成と教員教育研究業績の審査、この二点が含まれるということをどのように確実なものとするのか、まずお伺いをいたします。


○笠委員

 修正案第九十三条の第二項第三号の教育研究に関するまず重要な事項には、中央教育審議会大学分科会の審議まとめにあるように、今委員から御指摘のあった、教育課程の編成や教員の教育研究業績審査は含まれると考えております。
 そして、これを徹底していただくために、先ほど下村大臣も御答弁をされましたけれども、施行通知の中でこのことをしっかり政府としても徹底していただきたいというふうに考えております。



○青木愛

 もう一点、この二点とともに、施行通知案の中でございますが、「等」とあるわけでございます。この「等」には何を含むということを考えておられるのか。例えば、学校教育法施行規則第百四十四条にあります、退学、転学、留学、休学、あるいはキャンパスの移転ですとか学部の廃止等々、さまざまその対象は考えられるんですが、この「等」に含まれるものとしてはどのようなものを考えておられるのか、現時点でわかる中でお伺いをさせていただければと思います。


○笠委員

 今御指摘の学生の退学であるとか転学、留学、休学については、一般的には含まれるものもあろうかと思われますが、具体的には、各大学において教授会の意見を聞いて学長が定めていただくことになるというふうに考えております。



○青木愛

 それでは政府にお伺いをいたします。
 修正案にあります「学長が定めるもの」、これを今後どのように各大学に周知徹底をされていくのか、最後に確認をさせていただきたいと思います。


○吉田政府参考人

 お答えいたします。修正案にある「学長が定めるもの」につきましては、これまでも何度かお話がございましたけれども、そのほかの条文の解釈等とあわせて、施行通知等で各大学に対して周知徹底を図ってまいりたいと考えております。



○青木愛

 質問を終わります。ありがとうございました。