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立憲民主党 参議院議員 青木愛 Official Website

議会議事録JOURNAL

令和元年5月21日 国土交通委員会

海外へのインフラシステム輸出の現状について




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○青木愛

 国民民主党の青木愛です。
 今日は、海外でのインフラ展開について是非お伺いをさせていただきたいと思います。
 現在、新興国を中心としました世界のインフラ需要は膨大であります。急速な都市化と経済成長によりまして、今後の更なる市場の拡大が予想されております。
 二〇一七年のアジア開発銀行の試算によりますと、二〇一六年から二〇三〇年のアジアにおけるインフラ整備需要は約三千兆円を見込んでおります。他方、我が国は、今後、少子高齢化と人口減少が進む中で、国内需要の先行きが心配され、世界の旺盛なインフラ需要に今まで以上に目を向ける必要があります。
 このような認識の下で、五年前の二〇一四年十月に株式会社海外交通・都市開発事業支援機構、JOINが設立されまして、また、昨年九月には、海外社会資本事業への我が国事業者の参入促進に関する法律、いわゆる海外インフラ展開法が施行されたところであります。
 まずお伺いいたしますけれども、インフラシステムの海外展開を推進するその目的と、そして、その際のJOINですとかまた海外インフラ展開法にあります独立行政法人の役割について、まず改めてお伺いをしたいと思います。


○石井啓一国土交通大臣

 インフラシステムの海外展開を推進する目的として、三つ申し上げたいと思います。
 まず、日本の強みである技術、ノウハウを最大限に生かしまして、新興国を中心とした膨大なインフラ需要を取り込むことによりまして、日本経済の成長を図ることが挙げられます。また、相手国のインフラ整備が進むことによりまして、相手国における経済社会的な基盤強化が図られるとともに、海外に進出しております日本企業のサプライチェーンの強化等にもつながるわけであります。さらに、相手国の人々のライフスタイルを豊かにし、環境、防災等の課題解決にも貢献することで、日本のソフトパワーの強化や外交的地位の向上にもつながると考えております。
 次に、お尋ねの株式会社海外交通・都市開発事業支援機構、JOINと独立行政法人等の役割についてでありますが、まず、JOINは、日本企業とともにプロジェクトに出資をすることによりまして、日本企業の資金面及びリスク面での負担軽減を図ることを主な役割としております。
 また、独立行政法人等につきましては、案件の形成段階から相手国政府に対して効果的な働きかけを行うことなどによりまして、日本企業が参入しやすい環境づくりを行うこととしているところでございます。


○青木愛

 簡潔にまとめていただきまして、ありがとうございます。
 この海外事業は、国によっては政治経済情勢が変動しやすいなどの様々なリスクがあります。JOINやこうした独法がサポートしますと、事業展開する企業にとってはリスク軽減となります。事業がうまくいけば企業の利益となりますけれども、このリスクが現実のものとなったときには、その負債は元をたどりますと国民の税金で賄うということにもつながっていきますので、この点には常に御留意をいただきまして、また、こうした利益については何らかの形でやはり国民に還元されるべきだと私は考えます。常にそうしたことを念頭に置きながら進めていただければ有り難いなというふうに思っております。
 それでは、以下、質問させていただきます。
 これまでの五年間でJOINが支援を決定した案件は十九件に上ると伺っております。これら十九件のプロジェクトに取り組んできた中での経験から得られたことについてお聞かせをいただきたいと思います。


○岡西康博 国際統括官

 お答えいたします。
 海外交通・都市開発事業支援機構、JOINは、平成二十六年十月の設立以来、五年間で十九件のプロジェクトに対し八百五十二億円の支援決定を行い、海外における交通、都市開発の幅広い分野において我が国事業者の海外進出を支援してまいりました。また、JOINにおいては、金融支援に加え、我が国事業者のリスクを低減するため、経営参画、人員派遣などを含めたハンズオン支援も積極的に実施してきたところであります。
 海外におけるインフラプロジェクトでは、委員御指摘のとおり、相手国における政治リスク、完工リスクなどが存在します。JOINのこれまでの支援案件においても、相手国政府と許認可等の調整に時間を要したり、現地の事情で事業が予定どおり進まないといった事態が生じることもありましたが、JOINが相手国との調整に乗り出したり、経営、事業運営に直接参画し助言を与えることなどによって、こうした困難な課題に対応し、円滑な事業の実施に貢献してきたところであります。
 国土交通省といたしましては、JOINがこうした過去の経験を生かしつつ、今後も積極的に実績を積み重ねることによりまして、我が国事業者の海外進出が更に促進されることを期待しております。


○青木愛

 ありがとうございます。
 我が国は、二〇二〇年に約三十兆円のインフラ受注額を目標にしております。二〇一〇年には約十兆円、二〇一六年には約二十一兆円と、受注額を着実に伸ばしております。内訳を見ますと、情報通信分野の約九兆円、エネルギー分野の約四・七兆円と比較をいたしまして、国土交通省関連分野の受注額がそれぞれ、交通分野で約一・三兆円、基盤整備分野で約二・二兆円にとどまっているという状況にあります。
 世界の交通インフラ市場は、二〇一五年から二〇三〇年までの十五年間で約一・五倍の伸びが、その中でも特に鉄道分野で二倍以上の伸びが予想されています。欧米や中国の競合国との受注競争が激化をする中で、市場獲得に向けてどのような努力をされているのかお伺いをいたしたいこととともに、マレーシアとシンガポール間を結ぶ高速鉄道の建設、日本も大変注目をしてきたところでございますが、昨年、マレーシアのマハティール首相が誕生したことで、その計画が一旦中止されたと発表されております。高速鉄道の今後の見通しについても併せてお伺いをさせていただきたいと思います。


○岡西康博 国際統括官

 お答えいたします。
 今後も大きな成長が見込まれます世界の鉄道市場において鉄道分野のインフラ輸出を推進することは、我が国のみならず相手国の経済発展などにも貢献する観点から重要であると考えております。
 このため、国土交通省においては、競合国との受注競争が激化する中、受注の獲得に向けて戦略的に取り組んでおり、例えば安全性や定時性といった我が国鉄道の強みをトップセールスにより積極的に売り込むこと、海外インフラ展開法に基づき、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構などが有する調査、設計能力を活用して相手国における案件形成に初期段階から参画すること、相手国が自ら適切に鉄道を運行、保守できるようにするため、相手国における人材育成支援を行うことなどの取組を進めております。
 国土交通省といたしましては、引き続き、鉄道システムの海外展開を強力に推進する所存であります。
 また、お尋ねのマレーシア―シンガポール間高速鉄道計画につきましては、マレーシア、シンガポール両国間の合意により、二〇二〇年五月三十一日まで同計画の建設が延期されているところですけれども、費用削減及び事業スキームの見直しに係るアドバイザーが公募されるなど、マレーシア政府において検討を進める動きがあると承知しております。
 国土交通省といたしましては、引き続き高速鉄道計画の再開に向けたマレーシア、シンガポール両国の動向を注視するとともに、両国に対して機会を捉えて新幹線の経験に基づく我が国の考えを説明してまいりたいと、このように考えております。


○青木愛

 今後の取組に期待をしておりますので、よろしくお願いいたします。
 これからの海外展開の中で、幾つかのプロジェクトについてお伺いをしていきたいと思います。
 まず、昨年の十一月、独立行政法人都市再生機構、いわゆるURですが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州政府は、西シドニー空港周辺の地域における開発計画において、URがこれまで都市開発事業等で得た経験を生かした技術協力等を行うことで合意し、覚書を交換したところであります。
 海外インフラ展開法の施行後、URの第一号のプロジェクトとして大変注目をされておりますけれども、どういった中身なのか、また、今後の見通し、課題についてお聞かせいただければと思います。


○青木由行 都市局長

 お答えを申し上げます。
 独立行政法人都市再生機構、URでございますけれども、昨年八月のいわゆる海外インフラ展開法の施行によりまして本格的に海外業務を行えるようになったところでございます。これを受けまして、URで各国の都市開発案件について情報収集活動を進めます中で、昨年十一月にオーストラリア・ニューサウスウェールズ州政府と技術協力等に係る覚書を締結したところでございます。
 この覚書は、同州政府が開発を進めてございます、御指摘ございました西シドニー新空港とその周辺地域について、URが日本国内で蓄積してまいりましたノウハウを生かしまして、公共交通指向型都市開発に係ります技術協力などを行うという内容になっているというふうに承知をしてございます。
 今後でございますけれども、この新空港周辺地域のマスタープランの策定などをURが支援する、そして、その動きの中で海外都市開発への参画に意欲のございます日本企業とのつなぎ役としての役割をURに果たしていただくということを通じまして、我が国事業者の進出が期待されているところでございます。
 国土交通省といたしましても、こうした動きをしっかりと積極的に支援をしてまいりたいというふうに考えてございます。
 以上でございます。


○青木愛

 ありがとうございます。
 また、国土交通省は、カンボジア王国国土整備・都市化・建設省との間で定期的な会合を実施をするということで、カンボジア都市開発・不動産開発プラットフォームを設立をしたと伺っています。そのための第一回会合が、今年二月二十七日、カンボジア王国のプノンペンで開催されたということです。
 日本側からは、国土交通省、在カンボジア日本国大使館、また経済産業省、都市再生機構、住宅金融支援機構、日本下水道事業団、JICA、ジェトロ、JBIC、NEXI、そして海外エコシティプロジェクト協議会、J―CODE、国際建設住宅産業協会、JIBH及び民間企業の参加などがありました。カンボジアからは、チア・ソパラ副首相兼国土省大臣、民間企業、団体の参加などがあり、もう大変大規模な会合だったというふうに伺っておりまして、日本挙げての丸ごと都市づくりということだそうでありまして、このカンボジア都市開発・不動産開発プラットフォームの概要と今後の見通しについて是非お聞かせいただきたいと思います。


○岡西康博 国際統括官

 お答えいたします。
 国土交通省では、海外における都市開発、不動産開発事業への我が国事業者の参入の促進を図るため、ASEAN地域を中心として、都市再生機構などの独立行政法人などの持つ知見やノウハウを生かしつつ、現地において事業を行いやすいビジネス環境の整備を図ることを目的として、官民連携による二国間プラットフォームの構築を進めているところであります。
 委員御指摘のとおり、本年二月二十七日にその第一弾として、カンボジア王国国土整備・都市化・建設省と国土交通省との間で日・カンボジア都市開発・不動産開発プラットフォームの設立に関する覚書を締結するとともに、第一回会合を開催し、今後、年一回、本会合を開催していくこととしたところであります。
 今回開催されたプラットフォームでは、不動産、建設、住宅、商社などの多様な民間企業、日本側からは五十社、カンボジア側からは百二十社が参加したことに加え、委員御指摘のとおり、都市再生機構、住宅金融支援機構、日本下水道事業団などの独立行政法人、それや関係省庁など幅広い方々に参加いただきまして、相手国にとって包括的なソリューションを提供できる場となりました。まさに、分野横断的なまちづくりを進める国土交通省の強みを生かせる枠組みとなったものと考えております。
 今後の見通しにつきましては、今回カンボジア政府が選定したプノンペン、シェムリアップ、バッタンバンの三都市において具体的な案件形成を進めていくこととしており、来年春頃をめどに、カンボジアにおいて第二回目の会合を開催することといたしております。
 引き続き、相手国のニーズを踏まえつつ、官民一体となった都市開発、不動産開発事業の海外展開に取り組んでまいります。


○青木愛

 ありがとうございます。期待しております。
 さらに、インドネシアの首都ジャカルタで建設が進められておりました大量高速鉄道MRTが完成したということであります。今年三月二十四日に開業式典が開催されました。一部区間はインドネシア初の地下鉄として走るということでありまして、利用者の映像が日本のテレビでも紹介されておりました。
 JICAはこれまで円借款を活用して世界各国の地下鉄建設を支援しておりますが、ジャカルタ都市高速鉄道は、土木工事、車両納入、電気・機械システム等の整備の全てを日本企業が実施をしたオールジャパンによる地下鉄建設事業ということであるんですが、この開業式典におきまして、大統領の口から日本という言葉が語られず、日本の支援で建設されたことを現地の人々に余り知られていないという、このことに不満を思う日本人もいらっしゃるということでございます。
 出しゃばり過ぎず、かつ事実として上手にアピールすることも大切かと思いますが、その辺の事情をお伺いをさせていただきたいと思います。


○岡西康博 国際統括官

 お答えいたします。
 インドネシア初の地下鉄路線、委員御指摘のとおりであります、ジャカルタMRT南北線フェーズ1は、土木、電気、信号、車両から保守、運営までオールジャパンで支援を行い、本年三月二十四日に開業いたしました。開業式典には、国土交通省より篠原国土交通審議官が出席いたしました。
 開業式典においては、事業主体として日本側出席者が紹介されたほか、式典前後には、ジョコ大統領から石井駐インドネシア大使及び篠原国土交通審議官に対し、また、アニス・ジャカルタ特別州知事から日本側企業関係者に対し、日本側の協力に対する感謝の意が直接示されたところであります。また、在インドネシア日本大使館などの関係者によれば、ジャカルタ市民から、MRTの定時性や清潔さに加え、三月開業に間に合わせたことに対する称賛の声が寄せられていると聞いております。
 ジャカルタでは今後もMRT南北線の延伸や東西線の整備も予定されていることから、ジャカルタ市内における交通渋滞の解消に向けて引き続き協力してまいりたいと考えております。また、日本の支援であることが広く現地の利用者の方々に周知されるよう、引き続き取組を強化していきたいと考えております。


○青木愛

 よろしくお願いします。
 また、インフラ展開の中で注目すべき視点として、防災の観点があろうかと思います。
 世界各地は、地震、津波、風水害、また干ばつ等の自然災害に襲われまして、一九九八年から二〇一七年までの二十年間において、死者数が何と約六十万人、経済損失額も二兆九千八十億ドルに上ります。日本は優れた知見やノウハウを保有をいたしております。こうした自然災害のリスクに直面している国々に対する貢献について、実績も踏まえてお聞きをしたいと思います。


○岡西康博 国際統括官   

 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、我が国は自然災害を数多く経験し、過去に培った防災に関する優れた技術や知見を有していることから、国土交通省としては各国の防災対策に積極的に貢献できるものと考えております。
 実際に、国土交通省では、平成二十五年度から、防災協働対話として、相手国の防災課題と日本の防災技術をマッチングさせるべく、ワークショップなどを行っているところであります。これらワークショップを契機といたしまして、例えばベトナムではダム運用、洪水予警報システムの構築につながりました。また、気象衛星ひまわりの観測データを世界各国に提供しており、特に東アジア、西太平洋地域の約二十か国に対しては、台風や集中豪雨の防災活動で的確に生かされるよう、観測データの受信・解析装置の提供に加え、その利用方法の研修などの技術支援も行っております。
 今後、既存ダムを運用しながら機能向上を図るダム再生や洪水時の観測に特化した低コストの危機管理型水位計といった我が国の技術を積極的に海外展開していく方針であり、この方針の下、今月初旬の大型連休中には工藤国土交通大臣政務官がマレーシアに出張し、ゼイビア水・土地・天然資源大臣にトップセールスを行ったところであります。
 加えて、途上国政府の中には防災分野の投資への関心が低い国もあることから、各国が防災を優先課題と位置付けるなどの防災の主流化、これを我が国が主導するとともに、我が国の防災技術のPR、海外展開を促進してまいります。


○青木愛

 ありがとうございます。
 最後に、大臣にお伺いをさせてください。
 十五世紀半ばから始まりました大航海時代、そしてその後の時代は、先進国が後進国を略奪するという形で繰り返されてきました。しかし、二十一世紀の今日、人類は有限な地球環境を守りつつ、共存を図らなければなりません。自国の利益のため、他国に犠牲を強いたり、無理を強いるやり方は避けるべきだというふうに考えます。
 日本独自の質の高いインフラシステムを海外展開することに関しまして、最後、石井大臣の御見解、御決意をお伺いをしたいと思います。


○石井啓一国土交通大臣

 インフラシステムの海外展開を図る上では、相手国経済の持続的成長の観点から、透明性、開放性、経済性、対象国の財政健全性等の要素が重要であると考えております。これらを踏まえた上で、我が国の持つ質の高いインフラの強みであります、維持管理まで含めたライフサイクルコストが低廉であること、環境、防災面にも配慮をしていること、人材育成や制度構築も併せて行うことなどの特徴を生かして、他国と差別化を図りながら、我が国の先進的な知見、ノウハウを生かして、相手国の課題の解決に貢献することにつなげてまいりたいと考えております。


○青木愛

 ありがとうございます。
 質問を終わります。





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