石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律案について質疑採決 (付帯決議を提案し全会一致で可決されました) |
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○青木愛 立憲民主党の青木愛です。 早速質問に入らせていただきます。 この石綿による健康被害、暴露から発症までの潜伏期間が三十年から四十年と非常に長いわけでありまして、現在もまだ予断を許さない状況にあります。 本法律案は、特別遺族弔慰金等の請求期限の延長、また特別遺族給付金の支給対象の拡大及び請求期限の延長を内容とするものと承知をしております。 今回、この延長幅について十年としたその具体的な理由についてまずお伺いをさせていただきたいと思います。 ○渡辺博道衆議院議員 特別遺族弔慰金等及び特別遺族給付金につきましては、その認定件数は減ってきておりますけれども、令和二年度においても認定を受けた方がいらっしゃるという状況にございます。 これらについては、請求期限が本年三月二十七日で切れておりますが、石綿による健康被害を受けた方の御遺族に対する救済の充実を図るため、この請求期限を延長する必要があると判断し、前回、平成二十三年の改正と同様に十年の延長の措置を講ずる改正をしたいと考えております。 なお、御遺族の方々に請求期限内に請求していただくには、この救済制度及び請求手続の周知徹底が図ることが大変重要であると考えております。政府には、御遺族や医療機関を始めとする関係者に対するこの救済制度の周知を更に徹底するよう求めてまいりたいと考えております。 ○青木愛 ありがとうございます。 そして、この石綿健康被害救済制度の認定者の給付等の財源として、広く一般の企業からも拠出される形で石綿健康被害救済基金が運用されています。現在、およそ八百億円の残高があると伺っています。ここ数年はこの残高も大きく変化していないようであります。 患者団体などから、現在の法律では命の救済につながる治療研究の支援にこの基金が使えないことから、法改正を求める要望が出されております。患者団体からの御要請であります。また、四月には、医療者で構成される日本石綿・中皮腫学会というところがありまして、公的な基金等を活用して診断又は治療法の開発研究を要望する旨の声明文も発表されているところです。 この代表的なアスベスト疾患の中皮腫では、既に二〇一九年にアメリカ医薬品局、FDAで認可されている治療法があるんですけれど、いまだに日本では認可されていないなど、治療研究の現場では十分な資金がないために研究が進まないのが今の現況です。 救済のための八百億円の基金がありながら命の救済につながる治療研究が支援できない枠組み、この枠組みについてどのように提案者の先生方認識されているかを是非お伺いをさせていただきたいと思います。 ○近藤昭一衆議院議員 ありがとうございます。提案者の一人の衆議院議員の近藤昭一でございます。 今御指摘がありました石綿による健康被害の治療法の研究開発を促進することは非常に私どもも重要だと考えております。今御指摘もありましたが、私どもも患者の皆さんから、非常に石綿に対する規制が遅れた中、専門病院も決して多いわけではありません。そして、根治する方法がなかなかない。しかし一方で、他国におきましてそうした治療もあると、こういう指摘もある中であります。そういう中で、患者団体の皆さんからは、この石綿研究、ごめんなさい、石綿健康被害救済基金の活用を求めることがある、私どもも聞かせていただいておりますし、承知をさせていただいているところであります。 ただ、この点については、政府の審議会において、患者の団体の当事者の方も含めて、関係者として議論を進めていくと、こう聞いておるところであります。 我々としましても、効果のある治療法の研究開発を促進する方策について、石綿健康被害救済基金の活用も含めて、政府に対して早期に検討を行い適切に対応するように求めたい、このように考えております。 ○青木愛 ありがとうございます。 積極的な御意見を賜りまして、この点について山口大臣にも是非御意見を頂戴できればというふうに思いますけれども、やはり、この中皮腫という、一旦かかりますとなかなか治療が困難だというところがございましたけれども、アメリカではこの治療研究が進んでいるという、患者御本人にしても家族にしても、一番の願いはやはり治療研究が進むというところだと思います。 むしろ、補償よりも、せっかくの八百億円という基金がありながら、それを使えないというこの枠組み、是非改正をしていただきたいというふうに思いますけれども、環境省としての御所見をよろしくお願いいたします。 ○山口環境大臣 この石綿あるいはアスベストというのは、昔は全く害がどういうものか当然気が付かなかったわけですね。私の地元には造船所もあるんですけれども、造船所で仕事をされていた方で、もう何十年たってから肺の状態が大変だということで、今いろいろと苦しんでおられる方が身近におられます。そういう中で、何とかという気持ちは私も持っています。 今の現行上は、確かに石綿健康被害救済基金については、石綿健康被害救済法において、救済給付の支給に要する費用に充てることと規定されています。他方、この石綿健康被害救済法については、おおむね五年ごとに制度全体の施行状況の評価、検討を行うこととされています。 それを踏まえて、今月六日に中央環境審議会の石綿健康被害救済小委員会を開催し、年度内の取りまとめに向けて議論を開催したところです。御指摘の基金の使途についても本小委員会において様々な意見が委員の方々から出されたところであります。 まずはこの議論を見守らせてください。そして、できるだけ対応をどういうふうにできるのか考えていかなきゃいかぬなと思っています。 ○青木愛 命の救済という観点から、是非積極的なお取組をよろしくお願い申し上げます。御期待申し上げております。 次に、この給付内容の見直しについてなんですけれども、石綿健康被害救済制度では、療養中の方には月額十万円の給付が、また遺族の方には最大で三百万円の給付が行われます。しかし、家計を支える現役世代の方が発症する例が多くあり、お亡くなりになった場合には御家族の方々にも経済的に大きな打撃を与えることになります。中には、お子さんが未就学児、また就学児を抱える患者さんや御遺族もおられます。 今後、この給付体系の枠組みに関して、個々の被害者の状況に応じた新たな給付、例えば発症時の所得状況ですとか家族構成なども考慮した、そうした給付体系に増額することが是非必要だと考えますが、その点についての御見解も併せてお伺いをさせていただきたいと思います。 ○山口環境大臣 救済制度に基づく療養手当の給付水準については健康被害に対する救済であり、民事上の責任に基づかないという点で類似する制度との均衡を考慮しながら設定されています。 こうした制度の考え方も踏まえつつ、救済給付の在り方についてはこの石綿健康被害救済小委員会において今後議論いただくこととしています。まずはこの議論を見守らせていただきたいと思います。 ○青木愛 この点については、提案者にはお伺いさせていただいてもよろしいですか。この給付の内容については、済みません、通告をしておりませんでしたけれども、ちょっと流れの中で、できれば提案者にお伺いするべきかなと今ちょっと思ったものですから。 この給付金の内容ですね、家族構成にも基づいた、個々の状況に応じた給付額の増額が必要なのではないかなというふうに思うんですけれども、その点について一言、もしあればよろしくお願い申し上げます。 ○渡辺博道衆議院議員 突然の御質問でございますけれども、私は、アスベストに関して様々な、先般、労働者の、建設労働者の関係の給付金の関係も対応させていただいておりました。したがって、このアスベストによる健康被害というのは大変な問題であるということは私自身も認識をしております。 ただ、具体的な内容について、どのくらいの金額が妥当なのかという問題につきましては、先ほど環境大臣お話ありましたとおり、審議会の方で御検討をしていただきたいというふうに思っております。ただ、患者の立場をするならば、私は本当に大変な病だというふうに思っております。 ○青木愛 御答弁、誠にありがとうございます。 私も本当にそのように思いまして、やはり、このアスベストの問題は国のやはり判断が当初間違っていたのではないか、そのように私自身は考えるものですから、一旦病にかかりますと、御本人はもとよりその家族もその人生が大きく変わってしまいますものですから、是非、個々のその家族の人生がその後何とか全うできるように、気持ちの上でも是非国の方で支えてあげていただきたいなというふうに思います。 ヨーロッパには予防原則という考え方があります。化学物質あるいは遺伝子組換えなどの新技術に対して、人の健康や環境に深刻かつ不可逆的なリスクを及ぼすおそれが予想される場合、科学的に因果関係が十分に証明されていない状況では規制措置を強化をするという考え方です。一九七〇年代のドイツやスウェーデンなどで使われ始め、現在ではEU全体で採用されています。 ところが、日本は、先ほども申し上げましたとおり、科学的な検証を重視する立場を取り、そのため公害問題や食品の残留農業に関してもEUよりも大変緩い基準となっています。石綿に関してもEUが禁止した時点で日本も禁止しておればよかったと思うんですが、日本はその規制が緩いために、予防原則に立っていないがために禁止の措置をとりませんでした。 命は不可逆的です。発症し、死亡したのでは、幾ら高額の補償金をいただいても命は返ってきません。予防原則と科学的見地について、人の命と健康、そして生態系の保全に多大な責任を負っているこの環境省、環境大臣の、この予防原則という考え方ですね、これについてのお考えを是非示していただきたいと思います。 ○山口環境大臣 環境保全のための規制を行うに当たっては、我が国においては環境基本計画で予防的な取組方法を原則の一つとして位置付け、様々な環境政策における基本的な考え方としています。 今言われた予防原則という言葉と、それからこの環境基本計画で言う予防的な取組方法、それがどこまで同一かという議論はいろいろあるかもしれませんけれども、我々の考え方として、まず予防的な取組方法を原則の一つとして位置付けている。予防的な取組方法とは、環境影響が懸念される問題について科学的に不確実であることをもって対策を遅らせる理由とはせず、科学的知見の充実に努めながら予防的な対策を講じようと、そういう考え方です。環境省の不変の原点である人の健康や環境を守るとの目的に向けて、予防的に対策を講じていくことを念頭に置きながら環境政策の推進に取り組んでまいりたいと思います。 あと、アスベストあるいは石綿の問題については、これから更にまだ、いわゆる建設されたものを、それを取り壊すときなんかに昔使ったものから出てくる可能性ありますから、今我々が更に気を付けなきゃいけないのは、どれだけのものがあるか、要するに、検査というか、すぐに分かる仕組みというものが今出てきつつあるように聞きますから、やっぱりそこはもう少し、この測定の在り方、もう少し気を付けなきゃいけないんじゃないかなという声も私も聞こえます。 したがって、今まで分からなかったことが分かって、今いろんな救済方法があるわけですけど、更にそういう被害が広がらないように、現場ですぐ測定できるというものがもしもあるんであれば、それを更にやっぱり現場の方で、これは国土交通省なのかな、やっぱり取り入れていくようなことも大事だろうかなと思います。もうそれは予防的な取組になるのかもしれません。したがって、政府の中で少しまた更に連絡を取りたいと思っています。 ○青木愛 新技術に対して、人の健康とか環境に対する影響が科学的に因果関係が証明されていない間は使わないというのがヨーロッパの予防原則、使ってしまうのが今の日本の立場なんです。なので、環境省、また山口大臣としても、ここの認識をもう一回改めていただきたいというふうに思います。 時間が参りましたので、本改正に御尽力いただきました委員長を始め先生方、また関係者の皆様に心から感謝を申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。 付帯決議 ○青木愛 私は、ただいま可決されました石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲民主・社民、公明党、国民民主党・新緑風会、日本維新の会及び日本共産党の各派並びに各派に属しない議員寺田静君、橋本聖子君及び平山佐知子君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。 案文を朗読いたします。 石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。 一、石綿による健康被害に対する隙間のない救済の実現に向け、石綿による健康被害の救済に関する法律に基づく救済措置の内容について、改めて効果的な広報を行い周知の徹底に努めること。また、本法に基づく特別遺族弔慰金等の支給の請求期限の延長及び特別遺族給付金の対象者の拡大によって対象となると見込まれる者に対しては、丁寧な情報提供を行うこと。 二、国は、石綿による健康被害者に対して最新の医学的知見に基づいた医療を迅速に提供する観点から、中皮腫に効果のある治療法の研究・開発を促進するための方策について石綿健康被害救済基金の活用等の検討を早期に開始すること。 三、石綿による健康被害の救済に関する法律に基づく救済制度が、個別的因果関係を問わずに重篤な疾病を対象としていることを踏まえ、労働者災害補償保険法において指定疾病とされている良性石綿胸水、また、石綿肺合併症についても、指定疾病への追加を検討すること。 四、石綿にばく露することにより発症する肺がんについては、被認定者数が制度発足時の推計を大幅に下回っている現状を踏まえ、認定における医学的判定の考え方にばく露歴を活用することなどについて検討すること。 五、既に前回の施行状況の検討から五年が経過していることを踏まえ、本法附則の規定による見直しのほか、改正後の法律について、速やかに施行状況の検討を実施すること。その際、療養者の実情に合わせた個別の給付の在り方、療養手当及び給付額の在り方、石綿健康被害救済基金及び原因者負担の在り方等についても検討を行うこと。 右決議する。 以上でございます。 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。 |
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