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立憲民主党 参議院議員 青木愛 Official Website

議会議事録JOURNAL

平成28年10月20日 国土交通委員会

コンパクトシティの実情と課題について




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○青木愛

 希望の会(自由・社民)の青木愛です。
 国交委員会に所属するのは初めてでございますので、最も基本的なこと、そして重要と思いますこれからの町の在り方について御質問させていただきます。
 町の在り方に関して、その時々の時代的課題に対処するために、例えば一九九八年には、中心市街地の空洞化という課題を受けまして、中心市街地活性化法、大店立地法、都市計画法のいわゆるまちづくり三法が制定されました。その後、二〇〇六年には改正されておりますけれども、町の機能を中心市街地に集中させるコンパクトシティーの考え方が内容に盛り込まれました。そして、二年前の二〇一四年には、省庁連携でこのコンパクトシティー形成が前面に打ち出されまして、国交省でも都市再生特別措置法と地域公共交通活性化再生法の一部が改正されたと認識をしております。
 そこで、まず質問させていただきたいと思いますけれども、この二年前の二〇一四年の改正で国交省が打ち出しましたコンパクトシティー・プラス・ネットワークにつきまして、それが提案された背景と今の進捗状況についてお伺いをいたします。



○栗田卓也都市局長

 お答えいたします。
 我が国の地方都市では、一九七〇年以降の四十年間で人口が約二割増加しております。他方、市街地の面積、約倍増でございます。すなわち、多くの都市で住宅や店舗等の郊外立地が進み、拡散した低密度な市街地が形成されてまいりました。
 このような状況の中で、今後急速な人口減少が進み、市街地の更なる低密度化が進みますと、住民の生活を支える様々なサービスの維持確保が困難となり、地域の活力が大きく低下する、こういうことが懸念されます。また、大都市におきましては、高齢者、比率といいますよりも実数がこれから急増いたします。それに伴う医療、介護の需要が間に合うのかといった事態も懸念されておるところでございます。
 人口減少あるいは高齢化という中にありましても、地域の活力を維持しますとともに、福祉、医療等の生活機能が確保されて、高齢者が安心して暮らせる町を実現する。そのためには、各種の機能をコンパクトに集約してネットワークでつなぐコンパクト・プラス・ネットワーク、こういった考え方でまちづくりを進めることが必要と考えております。
 このような考え方の下で、平成二十六年に都市再生特別措置法の改正を提案させていただきまして、立地適正化計画制度の創設を見たところでございます。予算、税制などのインセンティブ策を講じながら、町中あるいは公共交通の沿線に生活サービス機能あるいは居住機能の誘導を進めていくこととしております。
 現在、二百八十九の市町村で立地適正化計画に関する具体的な作成作業を進めていただいております。これまでに四市で計画を作成、公表いただいております。今年度中にはおよそ百都市が作成、公表いただけるものというように考えておるところでございます。
 コンパクト・プラス・ネットワークの取組は、中長期的な視点で都市構造の転換を図るものですので、幅広い政策分野にわたります。政府では、国土交通省だけでなくて、関係省庁で支援チームを設置しております。この枠組みを通じまして、省庁横断的に支援施策の充実を図りながら、市町村の計画作成等を支援しているところでございます。


○青木愛

 まさにこれからその取組が進もうとしておりまして、ここでやはり過去の事例を検証しておく必要があろうかと思います。
 今から十年前の二〇〇六年の改正後にいち早く中心市街地活性化基本計画の承認を受けまして、いわゆるコンパクトシティー建設に向かいました富山市と青森市についてお伺いしたいと思います。
 先週、富山市にお伺いをしてまいりました。富山市のコンパクトシティーについて説明を受けますとともに、市内を視察いたしました。徒歩で利用できる生活圏、それを公共交通でつなぐという構想でございますが、市は、その生活圏をだんご、幾つかのだんごを公共交通という串でつなぐと、だんごと串という表現をされていました。廃線になりましたJR線をライトレールという路面電車として活用しまして、以前よりも運行本数を増やし、乗降駅も増設、バリアフリーにも配慮をした利便性の高い公共交通に生まれ変わりました。富山県は元々自家用車が一世帯当たり一・七台という全国二位の車社会でございますが、公共交通が便利になることによって、お年寄りや御婦人方、世代を超えた利用客がJR時代よりも相当数増えまして、経営も黒字とのことでございました。
 あわせまして、富山市は、六十五歳を超えた利用者に対しましておでかけ定期券という事業を行っております。市内の公共交通は一回百円という安価で利用ができます。現在、二千七百六十三人の利用者がおられ、定期券を利用した日は、一人当たり千七百九十四歩、歩数が増えているという具体的な数字をいただきました。
 筑波大学のスポーツ医学専攻の久野譜也教授がこの予防医学の実証実験を行っておりますけれども、一歩多く歩くことによる医療費の削減効果、これが〇・〇六一円だそうでございます。これをもって計算をいたしますと、年間で約一億一千万円の医療費削減の効果ということになります。
 また、別のデータで、日本福祉大学斉藤雅茂准教授によりますと、他者との交流が週一回以下の高齢者は、毎日頻繁に交流する人と比較しまして要介護や認知症になる危険性が一・四倍も高まるという御報告もございます。
 いずれにいたしましても、富山市における公共交通の成功は、住民の健康にも大きく影響しておりまして、医療費削減にも効果を発揮をしているということでございます。
 さらに、中心地に建設したマンションは、完成と同時に全室完売ということでございました。
 このように、富山市のコンパクトシティーは、課題を残しながらも、周辺の自治体に出店した大型ショッピングモールなどの影響を最小限に抑えながら、活力にあふれた市街地が形成されていました。
 そこで、お伺いをいたします。富山市のコンパクトシティーが成功している要因について、国交省はどのように分析をしておられますでしょうか、お教えください。



○栗田卓也都市局長

 お答えいたします。
 人口減少、高齢化の中にあって、コンパクト・プラス・ネットワークというまちづくりの重要性、先ほど申し上げました。この都市構造をコンパクトというか集約型に持っていくと、こういうことを考えますときに、公共交通の再編と併せて考えていくことが大変効果的というように考えております。
 富山市はコンパクトシティー政策の代表例としてしばしば取り上げられる、委員御指摘のとおりでございます。その要因について幾つか申し上げようと思いますが、幾つかの点は委員既に御指摘のとおりでございます。
 一つ目の特徴といたしまして、富山市におきましては、利用者の減少が続いておりましたJRの富山港線、このインフラを活用するということで、実質的な市の負担を抑えてLRTの整備ができたということでございます。これに、バリアフリーなどの乗り継ぎ環境の向上も含めて公共交通の整備を実施しております。これは他の都市にはない大きな特徴でありますし、優位点であるというようにも考えております。
 二つ目の特徴として、関連して様々なソフト施策が講じられております。先ほど公共交通の、特に高齢者に対します運賃割引制度の御紹介がございました。それも代表例でございますし、公共交通の整備と連携しまして、公共交通の沿線に居住を誘導する地区を設定いたしまして、当該地区に居住する場合には住宅建設費の一部を補助する、こういった市独自の取組が多面的に展開されておるところでございます。これらが二つ目の大きな特徴として挙げられるというように思います。
 これらの取組は、これも先ほど委員御指摘になったとおりでございますが、平成十九年それから平成二十四年に第一次、第二次として富山市の中心市街地活性化基本計画が作成されておりますが、それに基づきまして実施されてきております。現在の市長は平成十四年に御就任でございます。一貫して強力なリーダーシップによって施策を積極的に展開されてきたとしばしば指摘されておるというように認識しております。
 これらの取組の結果によりまして、富山市全体の人口に対します中心市街地、それから公共交通の沿線地区の人口の割合が増加しております。平成十七年には、今私申し上げました人口の割合が約二八%でございました。平成二十七年にはそれが約三三%というようになっております。このように、コンパクトシティーというような都市構造の形成が進んできておるというように認識しておるところでございます。


○青木愛

 続いて、青森市についてお尋ねをいたします。
 青森市も、富山市と同様に二〇〇七年二月に承認を受けましてコンパクトシティー構想に着手をいたしました。それまで青森駅を中心とした市街地区域は徐々にドーナツ化現象を見せまして、さらに人口減少と少子高齢化が拍車を掛けました。拡大した地域の除雪にも膨大な費用が掛かっております。中心部の活気をいかにして取り戻すかが切実な課題でございました。
 そこで考えられたのが、青森駅を中心に多額の資金を投じて複合商業施設アウガを官民合同で建築をいたしました。そこに図書館などの公共施設とテナントが同居をするというものでございました。また、公営住宅は、中心部に高層マンションを建設し、住民に郊外から移転していただくと。それにより中心部の活気を取り戻すというのが当初の計画でございました。
 ところが、アウガはテナントが集まらず、経営は赤字。郊外から高層マンションへ住民の移住も進んでおりません。行政コストを抑えるはずが経営危機に陥りまして、逆に多額の税金を投入する事態になっております。その責任を取って、今年八月二人の副市長が辞任、市長も辞意を表明する騒ぎになっております。
 そこで、質問をいたします。
 国交省は、この青森市のコンパクトシティー、この構想が迷走した原因はどこにあると分析しておられるか、それから国はこれまで青森市に対してどのような指導をしてこられたのか、計画を承認した国交省としての責任というものはどのように考えておられるのか、そして今回の立地適正化計画を承認した、先ほど四件公表されたとありましたけれども、この計画がこれから進むに当たって途中困難に直面した場合、例えば承認の取消しなどがあるのかどうか、どういった対応を取られるのか、その四点お伺いをさせていただきます。



○栗田卓也都市局長

 お答えいたします。
 青森市のコンパクトシティー政策についての御質問でございます。
 平成十一年の都市計画マスタープランでこの基本的な考え方が打ち出されております。都市内をインナー、ミッド、アウターという三つの区域に区分して、市街地の拡大抑制、中心市街地の活性化を図るということでございます。この考え方は、一昨年の都市再生法の改正によりましてコンパクト・プラス・ネットワークという施策を本格的に国で取り上げておるわけですが、地方で先行的に、先駆的に具体化していただいたものの一つというようには思います。
 他方、青森市の再開発ビルの運営会社が今委員御指摘のような状況に立ち至ったというようなこともまた事実でございます。要因は複合的なものがございまして、分析はなかなか容易ではありませんけれども、幾つか指摘をさせていただきたいと思います。
 まず、この再開発計画自身は、当初の都市計画決定が昭和六十二年でございます。それから時間が経過する中で、当時はバブル前夜でございますので、その後、バブルの崩壊というように至ります。平成二年に再開発組合の設立認可がされ、平成四年に再開発ビルの株式会社の設立が行われております。そのように大変経済環境が激変する中で再開発の事業が進められたということでございます。バブルが崩壊した後、平成六年には予定していた商業のキーテナントが撤退するといったようなことで、見込みが大きく乖離したということでございます。
 このような計画途上の事業環境の変化に対しまして、当初の事業規模を縮小はしたわけですけれども、適当な規模にまで縮小ができなかったと、結果として身の丈に合わない規模になってしまったということが大変大きな一つの要因かと思います。当初の事業費は約二百五十億でございます。それを縮小しましたけど、約百八十五億ということでございます。これは、他の地方都市のいわゆる市街地再開発事業の成功例と取り沙汰されるものから比べますと約三倍の、縮小後でも約三倍の規模でございます。こういう見直しを経ながら平成十三年にオープンいたしております。
 当初の計画では、やはり相当商業用途に偏ったものでございます。ただ、キーテナントの撤退によりまして、一部に、先ほど委員御指摘のとおり、図書館あるいは男女共同参画プラザですとか情報プラザですとか、そういった公的施設を導入しましたものの、地域の需要に比して商業用途に床の配分が偏っているということも要因として考えられるのではないかと思います。これが大きな二つ目というように考えております。
 また、この計画を進めていく期間、あるいはこの再開発が行われた後に周辺部に二つの大規模商業開発が行われております。これらを十分に押さえられなかったということで商業的な厳しい環境に、中に追い込まれたということも大きな要因として、付加的な要因として挙げられるのではないかというように考えておるところでございます。
 国土交通省としてどのようにこのようなことに対処してきたかという、あるいはその責任ということでございます。
 国土交通省では、中心市街地活性化基本計画というようなことに位置付けられた事業につきましての国費補助については、これは主として社会資本整備総合交付金が活用されておるということでございます。交付金を活用いただいた事業につきましては交付要綱の中で、事業の完了時だけでなくて交付期間の中間年度でも、必要に応じて事業の目標の実現状況等について自主的に評価を行うように求めておるところでございます。さらに、交付金の計画は複数年度で立てていただきますが、実際の交付金の交付は各年度行います。各年度、地方公共団体から予算要望の聴取に当たりまして、各事業の実施状況あるいは課題等を把握するとともに、過去の事業に関する分析結果も踏まえつつ助言を行ってきておるところでございます。
 御指摘の再開発事業、これは実は再開発組合が事業主体となりまして、青森県がその事業計画を認可したものでありますけれども、中心市街地の基本計画第一次の認定をしたときには既に再開発事業が完了しておりました。平成十三年、完了しておりました。事業の実施、この再開発事業につきましてということですが、その事業の実施あるいは施設の運営に関しまして、事業主体であります再開発組合がその責任の下、評価し対応すべきものというように認識しております。
 ただ、国土交通省といたしましても、そのような経験を十分改めて分析して、これから各地方公共団体、いろいろコンパクトシティーのための計画策定、あるいは事業の実施を進めていただく、それには反映させていくべきと考えています。
 そういう経験で、さきの通常国会で都市再生法を改正させていただきまして、身の丈に合った市街地開発事業といったような制度もつくらせていただきました。また、交付の期間中に交付金の交付を行えないと判断することは当然あるものでございますし、実例もございます。
 長くなって恐縮でございます。


○青木愛

 もう一か所だけ御紹介をさせていただきます。岩手県紫波町のオガールプロジェクトに関連してお聞きをします。
 紫波町は盛岡市と花巻市の間に位置する人口約三万三千八百人の町でございます。元々、町が紫波中央駅前に土地十・七ヘクタールを開発計画用地として買い上げたのですが、買収の直後に税収が落ち込んで、開発予算のめどが立たなくなりました。計画が頓挫したという経緯があります。そこで、この開発から資金調達まで、民間の株式会社が担う形で事業化に乗り出しました。現在は、図書館、産直マルシェ、子育て応援センター、カフェ、貸しスタジオなどを備えたオガールプラザ、またホテルやバレーボール専用体育館を備えるオガールベース、バーベキューなどを楽しめるオガール広場などがありまして、町民のみならず、今や年間で八十万人が訪れております。
 このオガールプロジェクトは、従来のような補助金に依存せず、民間が主体となって市場にしっかり向き合いながら公共を形成するという新しい官民の連携、民官連携の形として全国から今注目されております。
 これまでの官民連携プロジェクトは、官が主、民が従という形で行われてきましたけれども、厳しく批判する人からは、国や自治体が箱物プロジェクトを主導した場合、コスト意識に欠ける、特に維持管理費の見通しが甘いなどという手厳しい声を聞いております。官主導のプロジェクトの問題点について、またその改善策について、是非御意見、御感想をお聞かせいただきたいと思います。



○藤田耕三総合政策局長

 いわゆる官民連携事業の課題、いろいろあろうかと思いますけれども、事業の継続が困難となっているケースを見ますと、やはり一般的には官側におきまして事業性やリスクに関する認識が不十分といった問題があるケースが多いように思います。
 国土交通省としましては、地域のプラットホームを通じて、こういったノウハウの横展開を図っております。さらに、事業の実施前に公的セクターと民間セクターが対話をすることによって、市場性の調査を十分に実施することが重要であると考えておりまして、こうした対話のノウハウの取りまとめあるいはその横展開ということも今後取り組んでまいりたいと考えております。


○青木愛

 ありがとうございます。
 私は、この失敗した事例は、国の補助金を当てにした安易な開発計画ではなかったか、特に、中心地に箱物を建設すればテナントが集まる、住民が集まるという甘い計画ではなかったか、またその開発プロジェクトに地元住民が計画の初期の段階から参画していなかったのではないかなどと考えております。
 富山市長は、二年間で百回以上もの市民ミーティングを企画をし、住民や関係業者から意見を伺ったということでした。また、路面電車の上下分離で、車両などは市が持ち、運営は民間ができるよう法律改正を国に要望し実現をしたということでした。地方発信で国を変えていくという姿勢で臨んでおられます。
これまでのように政府が統一基準を作成してその基準に沿って一律に指導するのではなくて、地元のこうした熱意や要望に応える、富山市の例のように、もしも法律が邪魔をしているのであれば、法律を改正してでも地元の自発性を応援をすると、そういった姿勢に転換されることを強く要望いたしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。


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