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自由党 参議院議員 青木愛 Official Website

議会議事録JOURNAL

平成28年11月18日 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会

食の安全やISDS条項に対する懸念についてご意見を伺いました。
参考人
荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授、作山巧明治大学農学部准教授、磯田宏九州大学准教授




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○青木愛

 希望の会(自由・社民)の青木と申します。
 今日は、大変ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。多少質問が重なるかと思いますけれども、お願い申し上げたいと存じます。
 TPPは自由貿易を拡大をして加盟国を豊かにするとしての評価もございますけれども、私は、やはりTPPによって恩恵を受けるのはグローバル企業であって、一般の人々にとっては健康被害の可能性の増大、あるいはその国の社会制度の崩壊によって受ける被害の方が大きいと考えております。今日は、関心のあるところでお伺いをさせていただきます。
 まず、食の安全についてでございますが、食の安全について何点か、まず磯田先生にお伺いをさせていただきたいと思います。
 まず、安全基準についてでございますけれども、残留農薬、食品添加物、成長ホルモン、遺伝子組換えなどにつきまして日本とEUを比較しますと、EUは人体への影響を配慮して、使用基準、また輸入基準が大変厳しくなっています。それに対しまして、日本は国内での使用は禁止しているものの、輸入する食料、食品、また原材料についての基準は大変甘いといった状況がございます。
 日本も輸入に関してEU並みの基準に厳しくすべきだというふうに考えますが、現在のEUのこの安全基準の状況を再度御説明をいただきたいとともに、日本はなぜ輸入に対しては基準が緩んでしまっているのか、また、今後日本はどうすべきなのか、また、TPPに加盟した場合、さらに食の安全についてどのようなことが予想されるのか、その点についてまず磯田先生に御意見を頂戴いたしたいと存じます。



○磯田宏九州大学准教授

 最初におわびしますけれども、EUの食品安全行政そのものについては、申し訳ないんですけれども、私自身がきちっと研究しているわけではないので、その領域についてお答えすることはできませんので、控えさせていただきます。
 ただ、EUの基準そのものあるいは表示制度が、EUの方が、御指摘のとおり、成長ホルモンであったり添加剤であったり、あるいは遺伝子組換え食品であったりについて、基準そのものや表示の制度のものが厳しい、日本より厳しいものがあって、それはその差がなぜ出ているか、あるいは日本が歴史的に見てだんだん緩和する方向に向かってきているのはなぜかという御質問についてですが、一つは、先ほど言ったように、EUは独自の機関を持ち、そしてそれを基準にしてWTOのSPS協定にも依拠しながら独自の政策を貫徹しているということがあって、日本は、これは長年にわたってアメリカから、TPP以前の長年にわたって歴史的に通商代表部等の貿易障壁報告書等、あるいは日米構造協議等々のいわゆる経済交渉という中で様々なプレッシャーを受ける中で、必ずしもアメリカ的基準というわけではありませんけれども、いわゆる国際的な基準に、より高いものは国際基準に合わせるということを、アメリカのプレッシャーも受けつつ基本的には進めてきたということの結果であるというふうに認識しております。
 TPPは、そういう方向を強めさえすれ、それをEU的な方向に進路変更するということを著しく困難にする協定だというふうに認識しているところは先ほど申し上げたとおりでございます。


○青木愛

 ありがとうございます。
 今、表示義務のお話がございました。表示義務についてお伺いをさせていただきます。また磯田先生にお答えをお願いしたいと思います。
 アメリカやカナダ、オーストラリアなど主要な牛肉の輸出国では、牛を短期間で飼育するために、日本では禁止をされている肥育ホルモン、また塩酸ラクトパミンというものを与えています。しかも、日本ではそうした牛肉を輸入をして販売また提供する際に、そうしたものを使っているという表示をする義務がありません。また、遺伝子組換え食品に関しましても、その加工の段階でDNAやたんぱく質がなくなってしまうものについても表示義務がありません。例えば、遺伝子組換えで作られた大豆やトウモロコシといったものを輸入をして日本でしょうゆや油など加工して販売をしたとしても、それを表示する義務がありません。意外とこうした状況を知らない消費者が多いのではないかと思います。
 消費者が安全、安心の食品を選択できるように最低でも表示というものを義務化するべきではないかというふうに思いますけれども、日本の食品表示について、またTPPの影響につきまして御意見をお願い申し上げます。



○磯田宏九州大学准教授

 これから日本の消費者利益を守るために、表示の在り方について先生御指摘のことには私も全く同感でございます。
 ただ、問題は、TPPが発効した場合にそういう条件がどこまで可能かということに、繰り返しになりますが、なってくるわけでございまして、私の冒頭陳述の中でもややはしょって触れたわけですけれども、強制規格、任意規格、適合性評価手続、こういったものの作成、ここに表示も含まれてくるわけですけれども、これに他国の者を参加させ、意見提出をさせ、かつそれらを考慮する義務というものも課されてくるわけですね。また、他国の強制規格や適合性評価結果といったものについて、例えばアメリカならアメリカ、カナダならカナダ、オーストラリアならオーストラリアでなされているものを、向こうでの基準をクリアしていればそれを相互に承認していくということも促進するということがうたわれているわけでございます。
 そういうことがうたわれている協定が発効するとなると、現在以上に、先生御指摘のような表示義務を例えば成長ホルモンについて付けるとなると、じゃ、それは科学的根拠があるのかということが争われて、EUはできたけれども、アメリカやオーストラリア、カナダとの関係ではTPPのSPS規定に従わざるを得ませんので、それを突破してなおかつ表示義務をする、まして輸入禁止措置をとるということなどは極めて困難な協定であるというふうに言わざるを得ません。


○青木愛

 ありがとうございます。
 先ほども質問に出ておりましたけれども、科学的根拠と予防原則について磯田先生にお伺いをしたいのと、今質問をさせていただきました食の安全基準あるいは表示義務、また今から質問する点について、もし御所見があれば荒幡先生また作山先生にも是非意見を述べていただけたら有り難いと存じます。
 この科学的根拠と予防原則、安全性に関する総理や大臣の御答弁の中に科学的根拠という言葉が頻繁に使われております。科学的に害があることを実証できない限りそれまでは禁止しないという考え方、総理も大臣も取っておられます。これに対する言葉として予防原則というものがあって、先ほど磯田先生からも御説明ありましたように、危険があるかもしれないと予測される限りは実証されなくても規制しておくという考え方であります。
 この科学的根拠を取っている日本に対して、日本人はモルモットではないかという言葉が出回っております。症状が現れたときには既に手遅れということになります。消費者の立場に立てば、やはり予防原則を適用すべきであると考えております。ヨーロッパでは予防原則の立場を取っているというふうに聞いておりますけれども、この科学的根拠また予防原則について是非御意見をお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。



○荒幡克己岐阜大学応用生物科学部教授

 確かに、EUとアメリカ、大分安全性に対する意見の食い違いがあるというのは承知しております。ただ、私の認識では、今回のTPPに関しましては、それで日本の安全、食品安全性の政策等に大きく変更をもたらすものではないというふうに認識しております。
 いずれにしましても、EUで予防原則でかなり、何といいますか、非常に強い規制があるという事実は私たち日本でも十分認識していく必要があるかなと思っております。


○作山巧明治大学農学部准教授

 今の御質問の件ですけれども、TPP協定における食の安全、表示の問題ですけれども、まず予防原則という概念、これはWTOのSPS協定の五条七項に書いてあるわけですけれども、TPPのSPS章にないというのは事実ですね。そういうことで御心配なさる方が非常に多いというのはよく分かるんですけれども、私は次の二つの点で、先ほど申し上げましたけれども、TPPのSPS章で食の安全が損なわれるとかその表示義務ができなくなるということはないんじゃないかなというふうに思っています。
 一つ目の理由は、TPP協定というのは、既存の国際協定、具体的に言うと世界貿易機関の協定ですけれども、それに上乗せする形で作ってあるんですね。ですから、一般の方には非常に分かりづらいと思いますけれども、TPP協定だけを読んでも加盟国の権利義務関係がよく分からなくて、特にSPS章はそうですけれども、WTOのSPS協定をベースに更に加えますという書き方になっているわけですね。
 それで、さっき私申し上げましたように、WTOのSPS協定の権利義務は変えませんとか、ただ、手続規定のところはいろいろ追加しますよというような書き方になっているので、そういう意味ではWTOのSPS協定の予防原則というのはまだ生きているわけですね、そういう意味では。日本はWTO加盟国である以上、WTOのSPS協定を適用する権利はあるわけですから。
 二つ目は、これはもうちょっと解釈めいた話になりますけれども、交渉が妥結後の日本政府の文書を見ますと、SPS章のところとTBT章のところは、文書は今手元にありませんので概略ですけど、日本の食の安全が損なわれるような規定はありませんとか、遺伝子組換え食品の表示義務の変更を迫られるようなことはありませんというふうに書いていますね。これは、私も参画協議に従事していたときに大変消費者を中心に懸念があったところで、そこはやはり交渉の中では日本政府はかなり慎重に交渉したというふうに思うんですね。
 公務員OBとして申し上げると、政府が文書で書くということはかなり自信がある証拠で、よっぽど自信があるから文書に書いているんだろうなというふうに思いました。逆に言うと、私は、TPPの本質というのは、関税のところが異常に厳しいというのがTPPの本質だと思っていますので、ルールのところはそれほど厳しく切り込まれているわけではないのではないかというふうに思います。
 以上です。


○磯田宏九州大学准教授

 これは作山参考人と理解あるいは解釈の違いもあろうかと、含まれていると思うんですが。
 私は、繰り返しになりますが、WTO以上になっていると。予防原則が書いていないのは、WTOに書いてあるからそのまま使えますよと。日本は、仮に発効したとしてですけれども、TPPに加盟していないほかのWTO加盟国については、当然、WTOのSPS協定で対処していくことが可能だと。しかし、WTOに加盟しているかしていないかにかかわらず、TPPの加盟国に対してはTPPのSPS章で書かれていることがベースになる、ならざるを得ないという理解をしております。
 それは、ある意味では、例えば関税障壁についても、TPPは明らかにWTOで日本が示した関税面での譲許を大きく上回ることをしているわけですが、じゃ、WTOの引き続き加盟国であるからWTOの加盟国としての権限を行使できるのかというと、決してそういう法構造にはなっていないというのが私の理解でございますので、その点はやはり違ってくるというふうに理解しているところでございます。


○青木愛

 大変貴重な御意見をありがとうございました。
 次に、作山先生にお伺いをしたいと思います。
 先ほどの意見陳述の中で、経済以外の効果について政府の説明が足りないという陳述がございました。政治的、戦略的な側面、効果についての御指摘がありましたけれども、その点についてもう少し踏み込んだ具体的な御意見をいただきたいと思いますのと、今回、やはり国の主権が脅かされるということで、ISDSについて大変批判が高まっている中で、今後TPP締結されなかったと、不発に終わったとしても、FTAが結ばれる可能性もあるところでございます。FTAにもこのISDS条項というものがありますけれども、グローバル企業の利益を優先したISDSを修正して、人々の健康あるいは地域の環境といったものを優位に置いた、そうした考えに基づくものに修正をして自由貿易の道を広げることはできないものなのかなという、この点についてお聞かせいただきたいと思います。



○作山巧明治大学農学部准教授

 御質問の一番目ですけれども、最初の意見陳述では、私はTPPの政治的、戦略的評価というふうに申し上げましたけど、時間の関係で余り御説明できませんでした。
 私がここで政治的と申し上げているのは、安全保障上のと言い換えてもいいのかもしれませんけれども、例えば日米同盟を強化するとか中国に対する牽制効果というのもあると思います。実際、安倍首相も、TPPが交渉が妥結したときだったと思いますけれども、要するに、法の支配とか民主主義というような価値を共有する国とのTPPの協定というのは日本の安全保障上にも大変効果があるというふうにおっしゃっていますね。
 ですから、隠しているわけではないと思うんですけれども、私は、多分それが安倍総理の第一のプライオリティーじゃないかというふうに思うんですね。それならそういうふうに言ったらいいんじゃないかというのが私の意見です。アメリカのオバマさんは、TPPが通らないと誰がルールを作るんだと、中国が作るんだというふうに明確におっしゃっていますよね。やはりそこは政治的安全保障上の主導権争いというのを全面的に打ち出しているわけですから、そういうことの方が、正直に言ってもらった方が国民は分かりやすいんじゃないかということですね。
 あと、戦略的というのは、私の言っている戦略的はちょっとほかの方と意味が違いまして、さっき言いましたけれども、日本がTPPに入ったら、それから疎外される国、例えば中国であるとかEUが日本市場への輸出に不利になりますから、TPPには入らないんでしょうけど別な枠組みで日本と自由貿易しましょうよと言ってくる、これ実際起こっていますよね、という意味で戦略的というふうに申し上げました。
 ですから、私の意見は、恐らく安倍政権は政治的、戦略的な意味でTPPをやられているんだと思いますけれども、なぜかそれを余り正直に言わずに、経済的メリットが大きい大きいというふうにおっしゃっていると。ただ、経済的メリットは私はそれほど大きくないと。農業への被害も大きくないかもしれないけれども、政府の試算でも実は輸出はちょっと減るという試算になっているんですね。五百億円輸出は減りますという試算になっていますし、経済的メリット、余りない経済メリットを膨らまして本当の姿を隠そうとしているというのが問題だろうというのが私の指摘です。
 二つ目のISDSですけれども、簡潔に申し上げますと、私は、TPPにはISDSというのは必ずしも必要じゃないんじゃないかなというふうに思っています。
 それはどういうことかというと、何というかな、思想的な理由で反対しているわけではなくて、そもそもISDSというのは、日本企業が途上国に投資をしたときに、途上国が勝手にルールを変えたりして工場を接収されたりとかいう投資の不安定さがあるというのが原因なので、基本的には、日本の企業からしたら途上国と結ぶときに入っていれば十分なんですよね。日本の二国間のASEANとの協定でもフィリピン以外は全部入っています。片や、日本やアメリカのような高度な先進国で、司法がしっかりしている国が恣意的な司法判断をするというのは考えられませんので、それであれば別にISDSは必要ないわけですね。
 ISDSがどうしても必要というのであれば、別途二国間の投資協定を結ぶとか、やり方はいろいろありまして、日本も、EPAでISDSを結ぶとか投資協定で結ぶとか、入っていないものもありますけど、いろんなやり方があるので、それが本当に必要な国同士なのかということをよく考えて選択的に使っていくと。私が見る限り、TPPでISDSにこだわっているのは、そういうことは交渉している方は分かっているんでしょうけど、一回外す前例をつくると次のFTAをやるときに入れづらくなるので、そういう面が非常に大きいのではないかと思っています。


○青木愛

 大変貴重な御意見をありがとうございました。
 時間はまだありますでしょうか。(発言する者あり)済みません、不慣れで。
 ありがとうございました。今日は食の安全について中心に伺わせていただきました。この食の安全を確保するためにも、やはり安心、安全な食料を自ら生産をしていくということが大変大事だというふうに思っております。
 荒幡先生にも是非御意見を伺いたかったのですけれども、また機会があったらお願い申し上げたいと存じます。
 ありがとうございました。


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