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立憲民主党 参議院議員 青木愛 Official Website

議会議事録JOURNAL

平成29年4月20日 国土交通委員会

高速鉄道システムの海外展開に関する件について




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○青木愛

 希望の会、自由党の青木愛です。
 今年の一月に、参議院の重要事項調査団としてマレーシア、シンガポールを訪問させていただきました。現地では、マレーシア―シンガポール間の高速鉄道のプロジェクトが検討されておりました。二〇二六年の開通を目指し、クアラルンプールとシンガポール間約三百五十キロ、現在六時間三十分掛かるところを九十分に短縮をするということで、この首都間のアクセスの飛躍的な向上が大変期待をされていました。
 この件に詳しい阿達団長の御指導の下で、政府要人や、また日系企業の関係者の方々、また大使館から現状についての説明聴取、また意見交換を通じて、日本のインフラ輸出の意義そして課題について改めて考える大変良い機会となりました。年内後半にも入札の手続が開始されると伺っております。日本のほかにも、中国、韓国、また欧州勢など、このプロジェクトの獲得に向けて売り込み攻勢を掛けているというふうに伺っております。
 まず、このプロジェクトの現状と取組についてお聞かせをいただきたいと思います。


○奥田哲也 鉄道局長     

 お答え申し上げます。
 今先生から御紹介いただきましたマレーシアのクアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道につきましては、昨年十二月、マレーシア、シンガポール両国の二国間協定が締結をされまして、二〇二六年中の開業を目指すことや、車両や信号システムなどの入札を本年中に行うことなどが合意されたところでございます。また、今年の二月には車両や信号システムなどの入札について両国政府に助言を行うコンサルタントが決定されたところでありまして、今後、両国において入札に向けた検討が更に進められていくものと承知をいたしております。
 本高速鉄道につきましては、これまで、官民で緊密に連携をいたしまして新幹線導入を両国関係者に働きかけてきております。昨年七月には石井大臣が両国を訪問し、両国間で高速鉄道に関する覚書が署名された直後という機会を捉えまして、新幹線システムの採用に向けてトップセールスを行ったところでございます。
 具体的には、シンガポールにおいて高速鉄道シンポジウムを開催するとともに、両国の関係閣僚と精力的に会談を行い、新幹線の優位性等をアピールしてまいりました。特に、半世紀以上続く死亡事故ゼロに象徴される卓越した安全性、信頼性、優れたライフサイクルコストといった優位性を訴えかけるとともに、技術移転、人材育成に積極的に取り組むことが我が国の方針であることを具体的に説明してきたところであります。これに対しまして両国からは、我が国のマレーシア―シンガポール間高速鉄道への参画に期待するなどの発言がございました。
 昨年十一月には日・マレーシア首脳会談が行われまして、総理から新幹線導入への強い期待を表明したのに対しまして、ナジブ首相から、日本からの提案に期待する旨の発言があったところでございます。また、今年に入りましても、両国に対してハイレベルで新幹線導入の働きかけを継続して行っております。
 国土交通省といたしましては、年内に予定される入札に向けて、今後一層、トップセールスなどにより両国への働きかけを強化していくとともに、人材育成やファイナンス、さらには現地企業との共同を含む具体的な提案の検討を加速化し、新幹線システムの導入に向け、官民の関係者と緊密に連携して積極的に取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。



○青木愛

 一月の段階よりも状況が進んでいるところもあるのかなというふうに思いましたけれども、訪問の際、日本企業の方々のお話の中で、やはりファイナンスに関しての十分な情報がないということもあり、現時点においてはその出資について判断していないというお話がございました。一般的に、このような大型プロジェクトに、JOINの関わりですけれども、どのように対応していくのか、お伺いをしたいというふうに思います。
 先立って今プロジェクトが進んでおりますインドの高速鉄道のプロジェクトについては、こちらは円借款でありますので内容が違うのかなというふうに思いますけれども、大変規模が大きく、総事業の約八割で償還期間が五十年、利子率年〇・一%という、こうした状況に比べて出資予想額が少ないように思われますが、その点いかがかということ。また、JBIC、またJICAは関わっているのかどうか。民間をまつまでもなく国が、JOINが先行して出資をする、そうした考えも持ち合わせていいのではないかなというふうに現地で思いましたけれども、その辺りについてお伺いをさせていただければと思います。


○奈良平博史 国際統括官   

 委員御指摘のJOINでございますけれども、JOINは、金融支援のみならず経営参画、人員派遣を含めた総合的な支援を行っております。
 大型プロジェクトのように整備期間が長期で、かつ様々なリスクがあるために民間事業者だけでは参入が困難な場合に、JOINが出資を通じてリスク分担をし、経営参画や相手国との交渉を行うことで日本企業の案件形成、事業参入を支援しております。
 そこで、委員御指摘のマレーシア―シンガポール間の高速鉄道プロジェクトのファイナンス面でございますけれども、JBICのローンやJICAの円借款等の支援策を含めまして、熾烈な受注競争を勝ち抜いていくため、官民挙げたベストな提案ができるよう、関係省庁、関係機関、関係民間企業が一丸となって現在鋭意検討を進めているところでございます。
 JOINは民業補完ということが原則でありますが、一般的に申しまして、大型プロジェクトの建設立ち上がり段階では、事業リスクが大きく、民間資金が集まりにくい傾向がございます。本プロジェクトにおけるJOINの支援の在り方につきまして、ただいま委員の方から御示唆がございましたけれども、我が国企業のインフラ海外展開を最大限後押しできるよう、JOINの効果的な支援の在り方についても十分検討していきたいと考えております。



○青木愛

 ありがとうございます。
 やはり日本企業が参画しやすいよう、国が率先して環境を整備する必要があるのかなというふうに思いました。
 一方、インドの高速鉄道についてでありますけれども、こちらは日本の新幹線システムを導入することが既に決定されておりまして、二〇二三年の開業を目指して作業が進められていると思います。約一・五兆円、低利、長期間での円借款が決まっているんですけれども、まだお金が動いていないというふうにも伺っておりまして、こちらのプロジェクトは着実に前に進んでいるのかどうなのか。このインドのプロジェクトは、やはり何としても成功させて、日本の評価を世界に知らせるよい機会にもなるのだろうというふうに思いますけれども、現在の状況をお聞かせをいただきたいと思います。


○奥田哲也 鉄道局長

 お答え申し上げます。
 インドの高速鉄道計画につきましては、ムンバイ―アーメダバード間において日本の新幹線システムを活用して整備を進めることが二〇一五年十二月の安倍総理訪印時に署名された協力覚書において確認されたところでございます。以来、日印両国政府のハイレベルで構成されます合同委員会などにおきまして、技術仕様、円借款を含む資金面の手当てや技術移転を含む事業の詳細について協議をしつつ、二〇二三年の開業を目指して作業を進めておりまして、昨年十一月のモディ首相の訪日の際にも作業の進捗状況が確認されているところでございます。
 具体的には、昨年十二月より設計、入札図書の作成に向けた作業が進められているほか、両国政府関係省庁による高速鉄道の整備、運営に必要な技術移転を議論するタスクフォースが開催をされております。
 また、昨年十二月にインドで開催されました鉄道展示会におきましては、日本企業の出展を行いましたほか、その機会に日本鉄道シンポジウムや企業間交流を実施するなど、日本の高速鉄道技術に対する理解を促進するための取組を実施しております。
 国土交通省といたしましては、引き続き、日印関係機関と緊密に連携し、ムンバイ―アーメダバード間高速鉄道プロジェクトの成功に向け、事業を着実に推進してまいりたいというふうに考えております。



○青木愛

 ありがとうございます。
 この海外の高速鉄道の案件については、開業後の事業運営を担う現地の人材をどのように育成していくかが極めて重要であると考えておりまして、この分野での協力こそが日本の強みであると考えます。
 先行しているインドのケースではこの人材育成にどのように取り組んでいるのかお伺いをしたいと思いますのと、また、現地で指導をする日本人技術者の、やはりこちらも国際性を備えなければならないというふうに考えられますが、日本人技術者、十分に足りているのかどうか、この辺りの点についてお聞かせください。


○奥田哲也 鉄道局長

 お答え申し上げます。
 先生御指摘いただきましたとおり、海外の高速鉄道の事業の推進に当たりましては、施設、車両の整備にとどまらず、事業の運営に当たる人材の育成が開業後の安全、安定輸送に大変重要であるというふうに考えております。
 インドの例では、二〇一五年十二月に署名されました協力覚書に基づきまして、インド政府の幹部職員の短期招聘研修、インド鉄道省の若手職員の日本における研修、高速鉄道に関連する人材の日本への留学、高速鉄道研修機関の設立やその研修カリキュラムの策定などの支援を通じまして、インドにおける高速鉄道の運行、保守に関わる人材の育成に協力することとされております。これまでの実績といたしましては、今年の二月から若手職員の日本における研修が実施されているほか、昨年度までに九名の日本への留学を実現しております。
 また、御指摘の日本人技術者の確保につきましては、関係機関の協力を得つつ、本プロジェクトに必要な適切な人材を確保することとしております。
 加えて、先ほど申し上げました人材育成に関する支援を通じて育成されましたインド人技術者の活用についても検討してまいりたいというふうに考えております。
 国土交通省といたしましては、引き続き、本プロジェクトの円滑な推進のため、日印の関係機関と緊密な連携の下、人材育成にしっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。



○青木愛

 ありがとうございます。
 相手国に喜ばれる人材育成こそが日本の強みであって、各国から期待をされている分野だというふうに認識をしております。
 最後に、石井大臣にお伺いをいたします。
 この五月にマレーシア、シンガポールに、まさにこの高速鉄道の案件で出張されるというペーパーを昨日拝見をさせていただきました。
 世界の紛争地域を見ますと、その大きな原因の一つに貧困問題、また社会の不安定といったものがございます。日本が海外のインフラ整備に貢献をして相手国の経済発展に貢献することは、その国民の生活向上と社会の安定につながることは言うまでもありません。これは、広い意味での安全保障と捉えております。
 日本は、価格のみでは他国に劣るかもしれませんけれども、その品質や安全、また納期の厳守、その後のライフサイクルコスト、またメンテナンス、技術移転、人材育成など、先ほど局長さんからもお話がございましたとおり、これらを総合的に考慮いたしますと、日本はまさに鉄道先進国であり、世界のトップレベルにあるというふうに認識をしております。
 単にハードを売るだけではない、価格だけではない、そうした日本の強みをいかにこの年内にあります入札の評価につなげていくか、どう工夫するか、ここが現在の課題だというふうに認識をしております。出張を前に、石井大臣の御決意といいますか、こうした課題をどのように捉えているか、是非お伺いをしたいと思います。


○石井啓一 国土交通大臣

 新興国を始めといたしまして、世界のインフラ需要は膨大であります。これを積極的に取り入れることが今後の日本の成長に不可欠と考えております。また、インフラ輸出は、相手国の経済発展や地域の安全保障に貢献する側面もあると考えております。
 国土交通省におきましては、熾烈化する受注競争に勝ち残る戦略を明確化するために、国土交通省インフラシステム海外展開行動計画を策定をしておりまして、インフラ輸出に取り組んでいるところでございます。
 今後の主な課題といたしましては、例えば、相手国の要請へスピーディーに対応していくことや、国土・地域開発計画などの上流の計画あるいは上位の計画に積極的に関与していくことなどがありまして、これらの課題に着実に取り組んでいく必要がございます。
 さらに、委員御指摘のとおり、我が国の強みである質の高いインフラ、すなわちライフサイクルコストが低廉であることや、人材育成や制度構築も併せて行うことなどの特徴をしっかりアピールするよう精力的にトップセールスを行うことなどによりまして、多くの成果が生み出せるよう取り組んでまいりたいと考えております。



○青木愛

 ありがとうございます。
 是非現地での成果を期待をしております。よろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。







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