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立憲民主党 参議院議員 青木愛 Official Website

議会議事録JOURNAL

平成31年4月24日 本会議

建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律案について




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○青木愛

 国民民主党・新緑風会の青木愛です。
 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。全て国土交通大臣に答弁を求めます。
 まず、森友、加計学園問題や下関北九州道路の整備に関して、いまだそんたく政治の疑念が晴れておりません。この度は、国土交通副大臣の口から直接そんたく発言が発せられました。所管する国土交通大臣におかれましては、いま一度予算の公平性と透明性が確保されているのかどうか徹底的な検証を行い、国民に対ししっかりと説明責任を果たされるよう強く要望をいたします。
 それでは、質問に入ります。
 二十世紀後半以降、地球温暖化が深刻な課題となっています。
 二〇一五年十二月、気候変動枠組条約第二十一回締約国会議、COP21において、二〇二〇年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みとしてパリ協定が採択されました。我が国は、二〇三〇年度までに、二〇一三年度と比較して二六%削減することを中期目標として設定し、その達成に向けて二〇一六年五月に地球温暖化対策計画を閣議決定しました。
 同計画においては、温室効果ガスの排出削減対策として、新築住宅、建築物について、二〇二〇年までの段階的なエネルギー消費性能基準の適合義務化、住宅、建築物の省エネルギー対策の一層の普及、建材、機器の省エネルギー化に資する工法等の開発支援などが掲げられました。さらに、二〇一八年七月に閣議決定した第五次エネルギー基本計画においても、同様に、二〇二〇年までに新築住宅と建築物を適合義務化すると明記されています。
 しかし、本改正案では、建築物のエネルギー消費性能基準適合義務化については、これまでの大規模建築物に続き、今回は中規模以上の建築物のみを適合義務の対象としており、住宅については、マンション等の大規模住宅も含め、適合義務対象とされておりません。
 なぜ住宅を対象にしなかったのでしょうか。法制化における新築住宅の基準適合義務化についての検討の経緯について伺うとともに、なぜ過去の閣議決定の内容と矛盾する法改正となったのか、その理由と整合性の認識についてお伺いします。
 確かに、住宅は、オフィス等の建築物と比べ、数の多さに対して一軒当たりのエネルギー消費量は少ないかもしれません。しかしながら、建築分野におけるエネルギー消費量の約四割を占めており、手付かずにすべきではありません。
 政府が示したパリ協定における我が国の部門別の二酸化炭素の削減目標を見ましても、オフィスなどの業務その他の部門で四〇%の削減、住宅などの家庭部門でも三九%の削減とされており、それぞれ同等の高い目標値が掲げられています。
 世界の国々に目を向けても、ドイツでは全ての住宅、建築物に対し基準への適合義務が課され、アメリカでも、カリフォルニア州及びニューヨーク州では、州の法律により全ての住宅、建築物を義務化しています。フランスにおいても五十平米を超える住宅、建築物を義務化の対象としていることに比較して、日本は、本改正案で義務化の対象が三百平米以上の建築物のみとされており、規制の遅れが目立ちます。
 地球温暖化対策計画では、二〇三〇年の更に先の長期目標として、二〇五〇年までに温室効果ガスを八〇%削減することも示されています。早急に新築の住宅全般についても適合義務化を検討すべきと考えますが、お伺いいたします。
 今般の改正は、いずれも、将来的に新築や一定規模以上の増築、改築を行おうとする場合の規定です。新築や増築、改築のタイミングを待たねばならず、温室効果ガスの削減効果が現れるまでに時間が掛かります。
 現実には、新築物件よりも圧倒的多数の既存住宅、既存建築物が存在しています。パリ協定の目標や二〇五〇年の八〇%削減目標を実現するためには、これら既存ストックの対策を後回しにするわけにはいきません。新築物件への対策と両輪で取り組むべきであると考えますが、いかがでしょうか。
 また、省エネリフォームを促すには補助の増額や制度の周知も必要と考えますが、検討の予定の有無及び必要性の認識についてお伺いいたします。
 次に、窓について伺います。
 一般的な住宅は、窓などの開口部を通して夏は冷房の約七〇%、冬は暖房の約六〇%も熱が移動します。その分、冷房や暖房を強くしなければなりません。すなわち、住宅のエネルギー効率を上げる際に最も重視すべきことは開口部の断熱性です。その点、多層ガラスの木製サッシは断熱性に大変優れています。結露も防ぎ、防音性にも優れております。欧米諸国では主流となっています。
 しかし、日本では、窓の約九割がアルミ製サッシを使用しております。アルミは木材に比べて熱伝導率が一千二百倍も高いために、アルミサッシでは冷暖房に大量のエネルギーを無駄に浪費します。環境負荷も高いために、ドイツでは二三%、フランスでは三四%の普及にとどまっています。アメリカに至っては、五十あるうちの二十四の州、約半数の州でアルミサッシの使用が禁止されています。
 この窓の断熱性能を示す指標として、U値というものがあります。値が小さいほど断熱性が高いという指標ですが、フィンランドでは一・〇、ドイツでは一・三、イギリスでは一・八、フランスは二・一、この値を下回るようにとの義務基準が定められています。韓国でも二・七、中国でも二・五ですが、日本ではこの義務基準が定められておらず、四・六五でも通用しております。
 熱の六割から七割が窓を通して出入りすることを考えると、窓のU値の設定と義務化及び木製サッシの普及促進が重要だと考えますが、御見解をお伺いいたします。
 次に、エネルギー消費性能基準に適合した住宅を供給できるか否かについては、建設業者の事業規模によって大きな違いが見られます。年間着工戸数が百五十戸以上の大手建設事業者が供給する戸建て住宅は八八%が基準に適合している一方、年間着工戸数が四戸以下の小規模事業者が供給する住宅の適合率は僅か四四%とのデータがあり、倍の開きがあります。
 前回の改正時に本院国土交通委員会で付された附帯決議では、政府に対し、戸建て住宅を含めた小規模建築物の義務化に向けて、中小工務店や大工等の技術力の向上に向けた支援の拡充を行うことが求められています。
 中小建設業者が省エネ性能の高い住宅を供給できる能力の向上について、今後の対策をお伺いいたします。
 同様のことは、本改正案でエネルギー消費性能について説明義務が課された建築士についても言えます。あるアンケート調査によりますと、基準の計算、適合確認、どちらもできないと回答した建築士が約三割に上るとのことであります。改正案が施行されるに当たり、こうした建築士に対しどのような対策を講じていくのか、併せてお伺いします。
 このような中小の建設業者がエネルギー消費性能基準に適合した住宅を供給しづらいことや、基準に精通していない建築士が存在する背景には、基準が複雑であるということが指摘をされます。もちろん、それだけの能力を有する者でなければ大事な住宅、建築物の設計、建設は任せられないわけではありますが、基準をもう少し簡素化できないものでしょうか。簡素化されることにより、エネルギー消費性能適合性判定などにおいても審査時間の短縮等の効率化が図られます。
 従来と同等の性能を保持しつつ、計算等において簡便な方法が可能なエネルギー消費性能基準の実現について、政府の課題認識と検討予定の有無についてお伺いをいたします。
 最後に、人類は、長い歴史を通して科学技術を発展させ、便利で豊かで効率性の高い社会を築いてきました。しかし、人間だけの利便性を追求した結果、人類が生存する地球環境を破壊の危機に追い込んでいます。
 住宅、建築物は、人間にとって快適で安らぎの空間であるとともに、地球環境にも歓迎される建造物でなければなりません。この法律案を機に、温室効果ガスの削減に向けて大きく貢献することを願い、質問を終わります。


○石井啓一 国土交通大臣

 青木愛議員にお答えをいたします。
 住宅の適合義務化を行わない理由、その検討経緯及び過去の閣議決定との関係についてお尋ねがございました。
 本法案の検討に当たりましては、中小工務店等へのヒアリングや消費者へのアンケート調査等によりまして住宅、建築物の省エネ性能に関する状況等を把握するとともに、昨年九月から社会資本整備審議会におきまして今後の住宅、建築物の省エネ対策の在り方について審議が進められ、本年一月に答申をいただいたところであります。
 この答申等を踏まえまして、住宅については、省エネ基準への適合率が低い水準にとどまっているため、適合義務制度の対象とした場合、市場の混乱を引き起こすことが懸念されること、関連する事業者に省エネ関連の技術について習熟していない者が相当程度存在していること等の課題があることから、本法案において、適合義務制度の対象とはせずに、届出義務制度の監督体制の強化、説明義務制度の創設、住宅トップランナー制度の対象拡大等の措置により省エネ性能の向上を図ることとしております。
 また、エネルギー基本計画等の閣議決定におきましては、「規制の必要性や程度、バランス等を十分に勘案しながら、二〇二〇年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準への適合を義務化すること」とされ、適合義務化に関する施策の基本的方向性が定められております。
 本法案では、本閣議決定における方向性を踏まえまして、省エネ基準の適合率の状況等を勘案をし、中規模のオフィスビル等を適合義務化の対象に追加することとしたものであります。
 新築住宅の適合義務化についてお尋ねがございました。
 住宅につきましては、省エネ基準への適合率が低い水準にとどまっているため、適合義務制度の対象とした場合、市場の混乱を引き起こすことが懸念されること等の課題があることから、適合義務制度の対象とはせずに、説明義務制度の創設、住宅トップランナー制度の対象拡大等の措置により省エネ性能の向上を図ることとしております。
 また、現在、パリ協定の長期目標の実現のための政府としての長期戦略の策定に向けて検討が進められており、本年六月のG20までに策定する予定と承知をしております。
 本戦略はパリ協定の長期目標の実現等に向けた我が国の地球温暖化対策の長期的なビジョンを示すことを目的としており、本戦略のビジョンを地球温暖化対策計画等に反映していくプロセスを通じまして、具体的な施策の検討が進められていくものと認識をしております。
 こうした長期戦略や当該戦略を反映をいたしました地球温暖化対策計画等の見直しを踏まえながら、本法案に盛り込まれた施策の推進状況も丁寧にフォローアップしつつ、適合義務化の対象の拡大を含めまして、更なる省エネ対策の充実に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。
 既存の住宅、建築物の省エネ対策についてお尋ねがありました。
 省エネ対策の推進につきましては、新築の住宅、建築物に係る対策と併せまして、既存ストックに係る対策を推進することが重要と考えております。
 本法案は、新築の住宅、建築物の省エネ性能を向上させるための措置を中心としておりますが、既存の住宅、建築物の一定規模以上の増改築につきましても、適合義務制度、届出義務制度や説明義務制度の対象としているところであります。
 また、既存ストックの省エネ性能の向上を図るため、省エネリフォームに対する税制及び財政上の支援を推進をしており、今年度は、次世代住宅ポイント制度の実施や木造住宅の省エネリフォームに対する財政上の支援の充実を行うこととしております。
 さらに、これらの制度につきましては、全国各地域で行う講習会等において周知を徹底をしてまいります。
 今後も、新築の住宅、建築物の省エネ対策の推進と併せまして、既存ストックに係る省エネ対策を推進をしてまいります。
 窓のU値の設定と義務化及び木製サッシの普及促進についてお尋ねがございました。
 議員御指摘のとおり、木製サッシは、金属製サッシと比べて熱を伝えにくいことから、建築物省エネ法に基づく省エネ基準の適用に当たりましても断熱性能が高く評価をされております。
 また、省エネ基準における断熱性能に関する基準につきましては、設計の自由度を確保する観点から、窓のみについての基準は設定をせずに、住宅の外皮全体の断熱性能に係る基準を設定をしております。住宅については適合義務制度の対象とはせずに、届出義務制度の監督体制の強化、説明義務制度の創設等の措置を講じることとしておりまして、これらにより窓の断熱性能も含めて省エネ性能の向上を図ることとしております。
 また、木製サッシを活用しているものなど高い省エネ性能を有する住宅の普及に向けまして、先導性の高い住宅、建築物の省エネ化プロジェクトへの支援などを進めるとともに、本法案におきまして、注文戸建て住宅及び賃貸アパートの住宅トップランナー制度の対象への追加といった措置を講じることとしております。
 これらの施策によりまして、木製サッシを活用しているものなど高い省エネ性能を有する住宅、建築物の供給促進に取り組んでまいります。
 中小建設事業者等の技術力向上に向けた政府の取組についてお尋ねがございました。
 御指摘のとおり、平成二十七年度に公布されました建築物省エネ法の参議院の附帯決議には、「中小工務店や大工等の技術力の向上に向けた支援の拡充を行うなど、制度の円滑な実施のための環境整備に万全を期すこと。」という項目が盛り込まれております。
 本法案に盛り込まれました小規模住宅等を対象とする説明義務制度を円滑に推進するためには、中小工務店等の関連事業者が省エネ基準の内容や基準の適合状況の確認のために必要な省エネ計算の方法等について的確に理解していることが必要であり、その準備のための期間を考慮いたしまして、説明義務制度の施行日を法律の公布から二年以内としております。
 一方で、中小工務店には省エネ基準等に習熟していない者も多く、中小工務店に対しましてアンケート調査を行ったところ、約五割は省エネ計算ができないとの回答となっております。
 これまでも、中小工務店等を対象といたしました省エネ技術に関する講習会を全国で実施するとともに、地域の中小工務店等による省エネ性能に優れた木造住宅の供給に対しまして財政的支援を行ってきたところであります。これらの取組を今後より一層推進することによりまして、中小工務店等の関連事業者の省エネに係る技術力の向上に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 省エネ基準の簡素化についてお尋ねがございました。
 御指摘の省エネ基準につきましては、本法案に基づく適合義務制度、説明義務制度等において活用されるものであります。このため、本法案に盛り込まれました制度を円滑に推進するためには、関連事業者が省エネ基準の内容や基準の適合状況の確認のために必要な省エネ計算の方法等について的確に理解していることが必要であります。
 こうした関連事業者の省エネ関連の技術力の向上につきましては、平成二十四年度より、中小工務店等を対象といたしまして省エネ技術に関する講習会を実施をしており、本法案に盛り込まれた施策の内容等も含め全国各地域で実施をしており、今後より一層推進することを予定をしております。
 御指摘の省エネ基準の簡素化につきましては、本法案において適合義務制度の対象に新たに追加をされます中規模建築物につきましては、既に省エネ計算書の届出が義務付けられている届出義務制度の対象となっておるため、特に必要はないと考えております。一方で、新たに創設をされます説明義務制度の対象となる戸建て住宅等につきましては、御指摘のとおり、基準の適合状況の確認をより簡易にできるようにすることが必要と考えております。
 このため、省エネ基準への適否を簡易に判断することができる計算シートを整備することを予定をしており、当該計算シートに関する情報につきましても、全国各地域で行う講習会において提供していくこととしております。
 これらの取組によりまして、中小工務店を含む関連事業者の省エネ基準への習熟等を進め、説明義務制度を円滑に実施するための環境整備に努めてまいります。







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